●平成20(ワ)1089 意匠権侵害差止等請求事件「衣料用ハンガー」

 本日は、『平成20(ワ)1089 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「衣料用ハンガー」平成20年10月30日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081105114721.pdf)について取上げます。


 本件は、意匠権に基づく侵害差止等を請求し、棄却された事案です。久しぶりの意匠の事件です。


 本件では、意匠の類比判断をする際、取引者・需要者を判断主体としつつも、出願時における公知又は周知意匠等を参酌して要部認定をする点で、混同説を創作説により修正した修正混同説を採用していている点で、参考になるものと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 平田直人、裁判官 瀬田浩久)は、


『ア 意匠の類似範囲

 意匠の類否の判断は,当該意匠に係る物品の看者となる取引者,需要者において,視覚を通じて最も注意を惹かれる部分である要部を対象となる意匠から抽出した上で,登録意匠と被告意匠とを対比して,要部における共通点及び差異点をそれぞれ検討し,全体として,美感を共通にするか否かを基本として行うべきものである。


 そして,上記の判断に当たっては,当該意匠の出願時点における公知又は周知の意匠等を参酌するなどして,これを検討するのが相当である。 』

 と判示されました。


 なお、以前取上げた、
●『平成18(行ケ)10084 謝罪広告等請求控訴事件 意匠権 民事訴訟「ゴルフ用ボールマーカー」平成19年03月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070328112638.pdf)では、


「意匠の類否判断に当たっては,意匠全体の観察を要するものの,意匠に係る物品の各部位における構成に対する判断の比重がすべて等しいというわけではなく,取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものである。そして,この場合に,意匠の要部は,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等を考慮するほか,その意匠の各部が公然知られた意匠に係るものと同一の意匠に係る部位であるか,新規な創作の意匠に係る部位であるか等を斟酌して,認定すべきものである。

 したがって,意匠の要部の認定は,意匠に係る物品の取引者・需要者がどのような者であるか,その用途や使用態様がどのようなものであるか,意匠の各部位が公然知られたものであるか否か等の事実の認定を経て行うこととなるものである。」


 と判示されており、また、その一審である、

●『平成18(ワ)13406 謝罪広告等請求事件 意匠権 民事訴訟「ゴルフ用ボールマーカー」平成18年10月30日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061030175415.pdf)では、

「意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,更には公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,意匠に係る物品の取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものといえる。」

 と判示しています。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。