●平成19年(行ケ)第10283「発光ダイオードモジュールおよび発光ダ

Nbenrishi2008-10-31

 本日は、『平成19年(行ケ)第10283 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟発光ダイオードモジュールおよび発光ダイオード光源」平成20年10月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081031163822.pdf)について取上げます。


 本件は、7/10の日記(http://d.hatena.ne.jp/Nbenrishi/20080710)で取上げた最高裁判決である『平成19(行ヒ)318 特許取消決定取消請求事件「発光ダイオードモジュールおよび発光ダイオード光源」平成20年07月10日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080710145411.pdf)にて、特許異議申立における訂正の請求は、請求項毎に判断する必要がある、と判示され、取り消された請求項1の取消決定を、再度、知財高裁ににて判断し、特許庁がなした訂正審判の審決を取り消した事案です。


 本件では、訂正審判請求における判断対象の不可分一体性についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 田中信義、裁判官 石原直樹、裁判官 杜下弘記)は、


4 訂正審判請求における判断対象の不可分一体性について


(1) 前記第2の1に記載したとおり,本件特許に係る請求項は全4項であったところ,本件訂正審判請求は上記請求項中の1及び2に係るものであり,請求項2〜4については,特許取消決定が確定した結果,本件訂正審判請求のうち,請求項2に係る部分は訂正の対象を欠くものとして無効であり,結局,本件訂正審判請求は,本件特許の請求項1に係るものとなった。


 また,本件特許の請求項3及び4に係る部分についても特許取消決定が確定したため,本件特許は請求項1に係る発明を対象とするものとなった。


 ところで,特許庁は,前記第1の3に記載したとおり,本件特許の請求項1及び2に係る訂正審判請求である本件訂正審判請求について,訂正審判請求の対象となっていない請求項3及び4についても独立特許要件の具備の有無について審査すべきものとする立場を採っているところである。


 本件訂正審判請求については,上記のとおり,本件特許のうち,請求項1以外の各請求項に係る部分の特許取消決定は確定したため,請求項1に係る本件発明のみについての訂正の適否を検討すれば足りるものとなったが,以下,念のため,特許庁の上記取扱いについても検討しておくこととする。


(2) 平成6年法律第116号附則6条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成6年改正前」という。)の特許法126条3項は「第一項ただし書第一号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」と規定し,同条1項ただし書第1号は「特許請求の範囲の減縮」を掲記するところ,同条3項の上記「訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明」とは,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であって,「減縮されていない発明」を含むものではないというべきである。


 もっとも,上記文言は,文理上,「訂正後における特許請求の範囲に記載されている全ての事項により構成される全ての発明」と解釈する余地があるが,特許法における訂正の審判の位置付けに照らすと,このように解釈することはできないというべきである。


 すなわち,平成6年改正前の特許法126条が定める訂正の審判は,主として特許の一部に瑕疵がある場合に,その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判請求されるおそれがあるので,そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておくための制度である。


 他方,特許法153条3項は「審判においては,請求人が申し立てない請求の趣旨については,審理することができない。」と規定しており,訂正の審判においては,訂正を許すべきか否かが判断の対象となり,(その限度で同条1項及び2項に基づいて職権で広範囲に審理できるものの,)求められた訂正の可否を超えて判断することは許されないのである。


 仮に,特許権者が,複数の請求項の一部の請求項について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を求めて訂正審判を請求した場合において,その訂正の可否を,一旦査定・登録された,訂正を求めていない他の請求項に係る発明についての独立特許要件の具備の有無にも係らしめるというのであれば,訂正審判請求がされるたびに,特許庁は,全請求項について審査を繰り返すことになってしまうほか,特許権者が権利行使の準備等のために必要と考えている訂正について,適時に判断を得ることができない結果ともなり得るし,制度についてのこのような理解は,ひいては,特許権者が訂正したいと考えている請求項のみについて,第三者をして形式的な無効審判を請求させた上,当該審判手続において訂正請求をすることによって実質的に必要な訂正の効果を確保しようとするなど,制度の不健全な利用を招来するおそれすらある。


 したがって,平成6年改正前の特許法126条3項において,独立特許要件の存在が求められる発明は,「特許請求の範囲の減縮をした後の発明」であるというべきであり,審決の判断中,本件訂正において訂正の対象とされていない請求項3,4に記載された発明について独立特許要件の有無を検討した部分は,審決の結論を導くために必要なものではなく,そもそも本訴における審理の対象となり得ないものであったというべきである。


 なお,平成20年7月10日最高裁第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号)は「特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されない。」と判断したものであるが,その前提として,特許査定及び訂正審判請求と訂正請求の法的性質が異なることを示すために,「訂正審判に関しては,特許法旧113条柱書き後段,特許法123条1項柱書き後段に相当するような請求項ごとに可分的な取扱いを定める明文の規定が存しない上,訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予定されているといえる。」と説示するほか,「訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。」と判示している。


 しかしながら,上記判示中において「一体不可分」とされているのは,あくまでも「複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求」であり,「新規出願に準ずる実質を有する」との判示も,訂正が求められている請求項については,訂正後の特許請求の範囲の記載に基づく新たな特許出願があったのと同様に考えることができることを述べていると理解すべきものであって,訂正が求められていない請求項を含む全ての請求項について特許性の有無を再審査することまで求められるものでないことは明らかである。


第5 結論


 以上のとおり,取消事由3は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,審決は取り消しを免れない。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


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