●平成20(ネ)10029 差止等請求控訴事件「移動式足踏シャワー」

 本日は、『平成20(ネ)10029 実用新案権使用差止等請求控訴事件 実用新案権 民事訴訟「移動式足踏シャワー」平成20年07月23日 知的財産高等裁判所』 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080724145242.pdf)について取り上げます。


 本件は、実用新案権使用差止等請求事件の控訴事件で、本件控訴が棄却された事案です。


 本件では、判定の法的性格が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 今井弘晃、裁判官 清水知恵子)は、


『1 証拠(甲3〜5)によれば,以下の事実が認められる。

(1) 新日本石油株式会社は,平成18年2月20日,請求項1〜4に係る本件実用新案登録について無効審判(無効2006−40001号)を請求した。


(2) 前記無効審判の手続において審判請求人が提出した証拠は,下記のとおりである。

 ・・・省略・・・

(3) 特許庁は,平成18年11月21日付けで「実用新案登録第3050314号の請求項1〜4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」旨の審決をし,同審決は平成19年1月4日確定した。


(4) 上記審決の理由は,請求項1〜4に係る考案は,審判甲1及び審判甲3に記載された事項並びに審判甲2,審判甲4,審判甲5に記載された従来より周知の技術に基づいて当業者(その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者)がきわめて容易に考案をすることができたものであって,請求項1〜4に係る本件実用新案登録は実用新案法3条2項の規定に違反してなされたものである,というものである。


2 以上によれば,請求項1〜4に係る本件実用新案登録を無効とする審決が確定したことが認められ,これにより,請求項1〜4に係る実用新案権は初めから存在しなかったものとみなされる(実用新案法41条,特許法125条本文)ものである。


3 これに対し控訴人は,上記審決は本件実用新案登録を無効としたものではなく,本件実用新案登録に係る新出願を無効としたものであると主張するが,控訴人が主張するところの新出願なるものは,前記1(2)の認定に照らせば,無効審判手続において審判請求人が証拠として提出した各文献をいうものであり,審決はこれらの証拠に基づいて本件実用新案登録を無効としたものであるから(前記無効2006−40001号事件についての審決書である甲第5号証には,その1頁に,結論として「実用新案登録第3050314号の請求項1〜4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする」との記載がある。),控訴人の上記主張は採用することができない。


4 また控訴人は,上記審決後も特許庁の判定で,被控訴人商品が本件実用新案登録の考案の技術的範囲に属する旨の判定(判定2006−60005号)がなされたことを主張するとともに,これに沿う証拠として原審において判定書(被請求人プラテツク株式会社,甲2)を提出し,当審においても新日本石油株式会社を被請求人とする判定書(判定2005−60074号。甲6)を提出する。


 しかし,特許庁の判定は,原判決も指摘するように,一定の技術が考案の技術的範囲に属するか否かについての特許庁の意見を表明するものであって,判定が実用新案登録の有効性に影響を与えることはないのであるから(なお,最高裁昭和42年(行ツ)第47号昭和43年4月18日第一小法廷判決〔民事判例集22巻4号936頁〕は,要旨「特許発明または実用新案の技術的範囲についての判定は,特許庁の単なる意見の表明であって,行政不服審査の対象となりえない」とする),控訴人の上記主張は採用することができない。


5 結語

 以上のとおりであるから,本件控訴は理由がない。

 よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 なお、本判決文の事案の概要に、

特許庁の無効審判事件(無効2006−40001号)において平成19年1月4日,上記請求項1〜4に係る本件実用新案登録を無効とする旨の審決がなされそれが確定し,その後特許庁の判定(判定2006−60005号事件)において平成19年1月25日被告製品が上記考案の技術的範囲に属する旨の判定がなされている』

 と記載されているように、特許庁は、無効審結後、判定において属するという決定を出されていますが、無効審決および判定の決定時期が近いので、特許庁の判定でも、無効理由の存在などが明らかである限り(職権探知などは不要かと思います。)、侵害訴訟における特許法第104条の3による抗弁のように、無効理由を考慮して判定をしてもよいのではないか思います。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

●『NokiaQUALCOMM、クロスライセンス合意で特許係争にピリオド』http://journal.mycom.co.jp/news/2008/07/25/030/
●『ノキアクアルコム、特許侵害訴訟で和解』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20377794,00.htm
●『ノキアクアルコム、特許侵害訴訟で和解』http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20377794,00.htm
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