●平成20年新司法試験試験問題の知的財産法の特許法の問題(1)

 そういえば、平成20年度の新司法試験試験問題が、5/19付けで法務省HPのこちら(http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h20-21jisshi.html)に掲載されています。


 私は、新司法試験の受験生ではありませんが、選択科目(http://www.moj.go.jp/SHIKEN/SHINSHIHOU/h20-21-07jisshi.pdf)の知的財産法の特許の問題が気になります。


 今年の特許法の問題の設問1は、甲(特許権者)と、特許権の存続期間全てについての専用実施権を有する乙(専用実施権者)とが、実施者丁に対し差止めおよび損害賠償を請求できるか否かの問題です。


 この問題を見て直ぐに、以前の日記(http://d.hatena.ne.jp/Nbenrishi/20070603)でも取り上げた最高裁の『平成16(受)997 特許権侵害差止請求事件「生体高分子−リガンド分子の安定複合体構造の探索方法」平成17年06月17日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/74D198CA55CA6B3C4925702600059428.pdf)が思い浮かびました。勿論,ほとんどの受験生が同じだと思います。


 しかし、設問中の「乙は,甲発明の特許権について,その存続期間全部に対応する実施料全額を甲に一括して支払って,甲から,専用実施権の設定を受け,甲発明の実施品であるA傘の製造販売をしている。」という条件がありますので、この最高裁の判決内容をそのまま上げて特許権者も差止め請求できる、とはできないものと思います。


 どう答えるの最も良いか解りませんが、技術的範囲に属しているか否か検討した後、属しているのであれば、上記の設問中の条件と、最高裁の2番目の理由からすれば、特許権者に差止め請求を認める必要がないと思われる、と一言触れておいた後、1番目の特許権者にも文理上差止め請求権を制限していないという理由と、3番目の専用実施権者が将来実施を止めた場合の特許権者の実施を考慮すると、甲(特許権者)に差止め請求が認められる、と回答すれば良いのではないかと思います。
 

 また、設問中の「乙は,甲発明の特許権について,その存続期間全部に対応する実施料全額を甲に一括して支払って,甲から,専用実施権の設定を受け,甲発明の実施品であるA傘の製造販売をしている。」という条件と、最高裁の2番目の理由とを重視して、甲(特許権者)に差止め請求が認められない、という結論でも良いのではと思います。


 要は、上記最高裁判決の理由3つをしっかり知っており、その上で設問中の条件をあてはめれば、結論は、どちらでも良いのでないでしょうか?


 私の記憶では、この特許法の設問1は、過去に弁理士論文試験で出された問題に類似しているか、予備校の問題で解いたような記憶がありますので(※私の弁理士試験合格は7年くらい前です)、弁理士受験生の方もしっかり回答できるか一度考えてみて下さい。


 追伸;<気になった記事>

●『休眠特許の有効活用などを促進する2000億円規模の公的ファンドを創設』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=3557
●『「新たな経済成長戦略」について』http://www.meti.go.jp/topic/downloadfiles/e80523a02j.pdf
●『中国、地震災害救護に関する特許技術の審査をスピード化』http://www.newschina.jp/news/%E7%9F%A5%E8%B2%A1%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%BA%A6/%E7%9F%A5%E7%9A%84%E8%B2%A1%E7%94%A3%E6%A8%A9/46072