●平成18(ワ)8620商標権侵害差止等請求事件「マイクロクロス」(1)

 本日は、『平成18(ワ)8620 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟「マイクロクロス」平成20年03月18日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080319092429.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標権者である原告ワンズハート及び同原告から同商標権の専用使用権の設定を受けたと主張する原告マイクロクロス社が,被告標章を付した被告商品を販売する被告の行為は原告らの上記権利を侵害すると主張して,被告に対し,商標法36条1項及び2項に基づき,被告標章を付した被告商品の販売の差止め並びに被告商品及びその半製品の廃棄を求めるとともに,本件口頭弁論終結時までの間の被告標章の使用について,民法709条,商標法38条1項(原告マイクロクロス社につき)ないし同条3項(原告ワンズハートにつき)に基づき,損害金の一部等の支払を求めた事案で、その請求の一部が認められた事案です。


 本件では、簡単ですが、専用実施権の認定や、独占または非独占通常実施権の差止め・廃棄請求権、損害賠償請求権の有無等に判示されており、この点で参考になる事案かと思います。


 本日は、まず、争点(1)(原告マイクロクロス社は本件商標権の専用使用権者か)〜(3)(差止め・廃棄の必要性)について取り上げます。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 田中俊次、裁判官 高松宏之、裁判官 西理香)は、


1 争点(1)(原告マイクロクロス社は本件商標権の専用使用権者か)について

(1) 平成15年11月14日付け「商標使用契約書」と題する書面(甲3)には,原告ワンズハートが原告マイクロクロス社に対して本件商標の使用を専属的に許諾する旨の記載がある。


 しかし,商標権の専用使用権の設定は,登録しなければその効力を生じない(商標法30条4項,特許法98条1項2号)ところ,本件商標権について,原告マイクロクロス社に対する専用使用権の設定は登録されていないことが認められる(甲1の2)。したがって,原告マイクロクロス社は,本件商標権の専用使用権者とは認められない。


(2) もっとも,原告マイクロクロス社が本件商標権の専用使用権者であるとの同原告の主張は,同原告が本件商標権の独占的通常使用権者(他者と重ねて通常使用権の設定契約をしない特約のある通常使用権を有する者)であるとの趣旨を含むものと解する余地がある。


 しかし,証拠(甲21)によれば,原告ワンズハートは,ジャパンケミテック有限会社(以下「ジャパンケミテック」という。)との間でも,平成17年6月1日に本件商標権の使用許諾契約を締結したことが認められる。そうすると,原告マイクロクロス社は,遅くとも平成17年6月1日以降は,本件商標権の独占的通常使用権者ではないことが明らかである。


2 争点(2)(無効理由)について

 被告は,「マイクロクロス」は「マイクロフィバー製のクロス」の略称として日曜雑貨業界で日常的に使用されてきたと主張するが,本件で提出された全証拠によってもその事実は認められない。


3 争点(3)(差止め・廃棄の必要性)について

(1) 原告マイクロクロス社の請求について

 本件において,平成17年6月1日より前の時点で被告標章を付した被告商品を被告が販売していたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,少なくとも被告標章を付した被告商品を被告が販売していた期間において,原告マイクロクロス社は,本件商標権の独占的ではない単なる通常使用権者(以下「非独占的通常使用権者」という。)にすぎなかったことが認められる。


 非独占的通常使用権者には,差止め・廃棄請求権はない。


 したがって,原告マイクロクロス社の被告に対する差止め・廃棄請求は理由がない。


(2) 原告ワンズハートの請求について

 証拠(甲5の各号,甲7,乙7及び17の各号)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,原告らから,平成18年8月4日付けの「商標無断使用警告書」(甲6)の送付を受けるや,本件商標が登録されている事実を確認し,被告標章を付した被告商品の販売を中止するとともに,被告商品の商品名を「マイクロクロス」から「マイクロふきん」に変更して,従来の商品パッケージで「マイクロクロス」と表記された部分に「マイクロふきん」と表記されたシールを貼付して販売するとともに,取引先に対し,商品名を変更したことを連絡したこと,しかし同月28日以前には,なお「マイクロクロス」の商品名で出荷されたものもあったことが認められる。他方,本件口頭弁論終結時現在,被告が被告標章を付した被告商品及びその半製品を所持していることを認めるに足りる証拠はない。


 以上によれば,被告が今後も被告標章を付した被告商品を販売するおそれがあるものとは認められない。


 したがって,原告ワンズハートが被告に対して被告標章を付した被告商品の販売の差止め並びに被告商品及びその半製品の廃棄を命じる必要性は認められない。 』


 と判示されました。


 詳細は,本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

●『米Microsoftオンキヨーが特許クロスライセンスを締結−MSの「Windows Rally」プログラムも締結』http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080321/msonkyo.htm
●『オンキヨーが大幅続伸――マイクロソフトと特許相互利用契約』http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/chumoku.aspx?site=MARKET&genre=m6&id=AS3L2102A%2021032008
●『オンキヨー、ソーテックを吸収合併』http://magredirect.itmedia.co.jp/r/jlE/1A/n/1/news/articles/0803/19/news116.html
●『Blu-rayをITCが調査、半導体レーザー特許侵害の疑い』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/21/news103.html
●『米貿易委、LED特許侵害の疑いでソニーや松下を調査』http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20080321AT2M2100O21032008.html
●『mixiが修正規約を公表 「ユーザーに著作権」明記』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/19/news107.html
●『あなたが文化庁長官だったら著作権制度をどう変える?--有識者が議論』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20369744,00.htm?tag=nl