●平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権「包装用容器」

  本日は、『平成19(行ケ)10209等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟「包装用容器」平成19年12月26日 知的財産高等裁判所 』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071226160736.pdf)について取り上げます。


 本件は、部分意匠および全体意匠の拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が認容された事案です。


 本件では、高裁における部分意匠および全体意匠の類比判断も参考になりますが、それより「3 付言(審判の審理構造及び審理対象に関して)」のほうが参考になります。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官飯村敏明、裁判官大鷹一郎、裁判官嶋末和秀)は、

3 付言(審判の審理構造及び審理対象に関して)


 意匠登録出願に係る拒絶査定に対する審判の審理の対象は,意匠法17条所定の意匠登録を拒絶すべき事由が存在するか否かである。審判の対象は,審査の過程で審査官が発した「拒絶理由の通知」の当否でもなく,また,拒絶査定に係る拒絶理由の当否でもなく,さらに,請求人の主張の当否でもない。この点は,審判体において,自ら意匠登録をすべき旨の審決ができること(意匠法50条2項),拒絶査定の理由と異なる理由で拒絶すべき旨の審決をすることができること(同条3項)等の法条が設けられていることから明らかである。


 審判体において,拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとの結論を導くためには,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)のいずれかに該当する理由(該当するとの判断に至った論理の過程)を明示することを要する。そして,同条項に該当すると判断するに至った論理の過程を明示するということは,審判体において,(i)前提となる法律の解釈に疑義がある場合には,当該法条の解釈を示すこと,(ii)法条の要件に該当する事実が存在することを明らかにすること,(iii)事実を法条に適用した結果として,意匠法17条所定の条項(例えば同法3条1項,2項など)に該当するとの論理の過程が成り立つ点を明示することを含む。審判体は,この論理過程を説明する責任を負担し,文書をもって明示することを要する(意匠法52条,特許法157条)。


 ところで,審決書(1)及び(2)を見ると,その「理由」には,「原審の拒絶理由」欄で,拒絶査定に係る拒絶理由の要旨が記載され,「請求人の主張」欄で,拒絶査定を不服とする請求人の主張が記載され,「当審の判断」欄の「請求人の主張の採否について」との項目で,請求人の主張の当否が記載され,同欄の「原審の拒絶理由の妥当性について」との項目で,拒絶理由の当否が記載されてはいるものの,審判体の判断の論理過程を直接的に示した記載部分はなく,結論として,同欄の「本願意匠の創作の容易性について」との項目において,「以上の検討によれば,請求人の主張は採用することができず,原審の拒絶理由は妥当であるから,本願意匠は,出願前に当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作をすることができなものであるといわなければならない」との記載がされているのみである。


 このような審決書(1)及び(2)の理由記載は,その体裁だけで直ちに審決の違法を来すとの結論を導くものであるか否かはさておき,審判体が,本願部分意匠又は本願全体意匠が意匠法3条2項に該当すると判断した論理の過程を的確に示したものということはできない。


 すなわち,審決書(1)及び(2)の理由は,論理付けの根拠とは無関係かつ不要な事項を含み,審判体の判断の基礎となる論理付けが明りょうでなく,審判の構造に対する誤った認識に基づいた判断であるとの疑念を生じさせるという意味において,妥当を欠くものといえる(特に本件では,少なくとも拒絶理由通知における理由部分は,僅か5行ないし7行からなる,ごく簡単で定型的な記載にすぎないから〔甲13の1,2〕,審判体において,そのような理由が妥当であるとの判断に至ったからといって,当然に,審判体としての結論に至る論理付けとして十分であるとすることはできない。)。上記の趣旨は,一般の審決書における理由記載においても,同様に留意を要すべき点であるといえる。


4 結論


 以上によれば,原告の本訴請求はいずれも理由があるから,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 特許庁審判官の審決書の記載に影響を与えるのではと思います


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸1;<新に出された知財判決>

●『平成19(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「アレスター」平成19年12月26日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071227103830.pdf
●『平成19(行ケ)10271 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「可動適合型インサートを有する膝人工関節」平成19年12月26日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071227103045.pdf
●『平成19(行ケ)10040 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「タッピンねじを備えた固定ねじ」平成19年12月26日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071227102459.pdf
●『平成19(行ケ)10165 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「画像処理装置」平成19年12月26日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071227102122.pdf


 追伸2;<気になった記事>

●『三星電子、日本のシャープにLCD技術特許訴訟起こす』http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=94243&servcode=300§code=320
●『Samsung、シャープを特許侵害で反訴』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/27/news041.html
●『Google、AutoLinkめぐる特許訴訟で後退』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/27/news040.html
●『グーグルの特許侵害訴訟、米連邦控訴裁判所が差し戻し』http://jp.reuters.com/article/domesticEquities/idJPnJS807265020071226
●『グーグルの特許侵害訴訟、CAFCが連邦地裁に一部差し戻し(CAFC)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2472
●『ノキアとインターデジタル、ともに勝利宣言〜3G携帯電話方式の特許侵害訴訟で 』http://www.usfl.com/Daily/News/07/12/1224_019.asp?id=57634
●『3G携帯電話の標準特許で英高裁が判決、インターデジタルの多くは不要(InterDigital)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2470
●『フェアチャイルド、特許侵害問題で裁判所が同社の訴えを棄却』http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djBYA4161.html
●『アステラス製薬抗生物質の特許侵害訴訟で勝訴』http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007122700598
●『アステラス製薬、経口用セフェム系製剤「セフゾン(R)カプセル」の特許侵害訴訟 勝訴確定のお知らせ』http://www.japancorp.net/japan/Article.asp?Art_ID=41390&sec=164
●『経営者のための知的財産入門(4) 知的財産に関する誤解その4 - 「知的財産は外部の専門家に任せれば良い」』http://journal.mycom.co.jp/series/chizai/004/
●『来年度の特許特別会計予算案は3.2%増の1228億円(特許庁)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2466
●『平成20年度知的財産政策関係予算案等の概要』http://www.meti.go.jp/press/20071224001/04_tokkyo.pdf