●平成19(行ケ)10002 審決取消請求「車両用サスペンションアーム」

  本日は、『平成19(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟平成19年12月18日「車両用サスペンションアーム」知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071219153018.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、進歩性を判断する際に引用例に適用する周知例は、本願発明と技術分野が異なっていても、各種技術分野における横断的な周知技術事項の立証のために使用する場合、進歩性を判断する際の公知資料としても問題がないと判断した点で、参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官田中信義 裁判官古閑裕二 裁判官浅井憲)は、

『ア 原告らは,引用文献2や周知例2及び3は本願補正発明とは技術分野が異なるから,これらを容易想到性の根拠にすることはできないと主張する。


  確かに,引用文献2や上記各周知例の技術分野が本願補正発明と異なることは原告らの指摘するとおりであるが,既に述べたように,上記各周知例は引用文献2に示された「板材の側端部を略パイプ状に形成すると板材の剛性が高まる」との技術事項が周知であることの裏付けとして提出されたものであるところ,形鋼等の板材は,建築,土木,橋梁等の技術分野に止まらず自動車等の技術分野においても幅広く活用されている基礎的素材であることは既に認定したとおりであるから,上記周知の技術事項は板材を活用する各種技術分野における横断的な周知の技術事項と見ることができるのであり,そうすると,原告らが問題とする技術分野の相違は,本願補正発明の相違点3に係る構成を想到する際の容易想到性の阻害要因になるとまではいえないものというべきである。したがって,この点に関する原告らの主張は失当である。


イ 原告らは,本願補正発明のサスペンションアームと引用文献2の形鋼20では荷重の作用態様が著しく異なるから,引用文献2は参考にならないと主張する。


 本願補正発明のサスペンションアームには,前記(1)の各刊行物に指摘されているように水平方向や上下方向に多様な外力が作用するためその剛性を高める必要があるところ,引用文献2においても前記(4)に認定したように,「・・・より軽量でありながら,少なくとも,図1に示すような「?」字形の標準ビームと同等のすぐれた曲げおよびねじれ強度特性がビームに付与される」との記載があり,その構成により曲げ及びねじれに対する剛性が高まることが開示されているのであるから,サスペンションアームの剛性を高める上で上記記載が阻害要因になるものと見ることはできない。よって,この点に関する原告らの主張も失当である。


3 取消事由3(格別の作用効果の看過)について

 原告らは,本願補正発明は,サスペンションアームの軽量化・小型化を図りながら剛性を高めること,プレス加工で製造可能であり製造工程が簡素であること,略パイプ状の端縁に隙間があることにより水はけが良いことなどの予測できない格別の作用効果があるのに審決はこの点を看過していると主張する。


 しかし,略パイプ状の構成が剛性を高める上での周知の構成である以上,これによる作用効果が予測困難であるとはいえず,また,製造工程の簡素化も周知のプレス加工を採用した結果であるし,隙間を設けることは当業者がその設計に当たり適宜想到することができる程度のことであるから,原告らが主張する本願補正発明の作用効果をもって予測困難なものとすることはできない。よって,この点に関する原告らの主張も失当である。


4 取消事由4(本願発明についての進歩性判断の誤り)について


 以上2及び3に説示したところによれば,本件補正を却下した審決の判断に誤りはないから,同判断に誤りがあることを前提とする取消事由4は,その前提を欠くものとして失当である。


5 以上の次第で,審決取消事由はいずれも失当であり,本件各請求はいずれも理由がないから,同各請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。  』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸1;<気になった記事>

●『MPEG LA Sues Audiovox for Breach of MPEG-2 and 1394 Patent Pool Contractual Obligations』http://www.mpegla.com/news/n_07-12-20_pr.pdf
●『日米、特許審査迅速化を本格実施』http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071221AT3S2101J21122007.html
●『USPTO and JPO to Implement Patent Prosecution Highway on Full-Time Basis 』http://www.uspto.gov/web/offices/com/speeches/07-50.htm
●『アルダージ、デジタルケーブル放送向けの標準特許技術を募集開始(アルダージ)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2439