●平成19(行ケ)10121 審決取消請求「増加収量血小板採取システム」

  本日は、『平成19(行ケ)10121 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「増加収量血小板採取システム」平成19年12月05日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071211095032.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、特許請求の範囲に記載のない実施例の構成を特許請求の範囲に取り込むことは参酌の限度を超えるものであって,許されないものである、と判断されている点で参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官塚原朋一 裁判官宍戸充 裁判官柴田義明)は、

『エ 原告は,本願発明に係るチャンバーは,チャンバーの壁面,特に外側壁面に沿ったどの位置でも,実質的に回転軸からの回転半径が等しくなるように湾曲させて構成される旨主張する。


 しかし,上記のとおり,本願発明の特許請求の範囲にいう「使用時,他の高G側よりも回転軸に近く配置される低G側を有し」とは,低G壁の全体が高G壁の全体よりも回転軸の近くに配置されていることを意味するものと認められるが,それ以上のものではなく,その他,チャンバーの形状を限定する記載を特許請求の範囲に見いだすことはできない。


 本件明細書の発明の詳細な説明をみると,図2には,チャンバーの壁面,特に外側壁面に沿ったどの位置でも,実質的に回転軸からの回転半径が等しくなるように湾曲させたチャンバーが図示されていることが認められる。


 しかし,本件明細書には,【好ましい具体例の説明】(段落【0016】)の1つとして図2が示されているのであって,この実施例の構成を,特許請求の範囲に取り込むことは,参酌の限度を超えるものであって,許されないものである。


 したがって,チャンバーの壁面,特に外側壁面に沿ったどの位置でも,実質的に回転軸からの回転半径が等しくなるように湾曲させて構成されるとする原告の上記主張は,採用することができない。  』


 と判示されました。


  本件も、一昨日紹介した『平成18(行ケ)10428 審決取消請求事件 実用新案権 行政訴訟「一体成型によるブラジャーの構造」平成19年05月31日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070604104218.pdf)と同様に、請求項の用語の意義が明確であるため、リパーゼ最高裁判決の原則の通り、明細書の記載を参酌せずに請求項の用語のまま判断したことになるかと思います。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸1;<気になった記事>

●『米テセラ社、エルピーダなど14社を特許侵害でITCに提訴(テセラ・テクノロジーズ)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2342
●『米イムクローンと仏サノフィ・アベンティス、特許侵害訴訟でイェーダ社と和解(イムクローン・システムズ)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2346
●『LG電子、デジタルTV業界の「クアルコム」に(上)』http://www.chosunonline.com/article/20071211000054
●『LG電子はデジタルTV業界の「クアルコム」(下)』http://www.chosunonline.com/article/20071211000055
●『06年度の科学技術研究費、18兆4631億円で最高・総務省調べ』http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071211AT3S1101N11122007.html