●平成18(ワ)4933 不正競争行為差止等請求事件「耳かき事件」

  本日は、『平成18(ワ)4933 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟「耳かき事件」平成18年09月28日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061003161436.pdf)について取り上げます。


 本件は、原告の製造・販売する耳かきの形態が原告の商品等表示として周知・著名なものになっており,被告が原告製品の特徴的形態と酷似する耳かきを製造,販売したことは,不正競争防止法2条1項1号,2号所定の不正競争行為に該当するとして,被告の製品の製造,販売の差止め等を求め、その請求が棄却された事案です。


  つまり、東京地裁(民事第46部 設樂隆一 裁判長裁判官)は、


1 争点1(被告製品の製造・販売は,不正競争防止法2条1項1号,2号の不正競争行為に該当するか)について。


(1) 商品の形態の商品等表示性について


 不正競争防止法2条1項1号が,他人の周知な商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用することを,同項2号が,他人の著名な商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用することを,それぞれ不正競争行為と定めた趣旨は,上記の使用行為により,周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止し(1号),又は,著名な商品等表示に化体された他人の高い信用,名声,評判により商品や営業の売上げを促進させる顧客吸引力へのただ乗り行為を防止し(2号),もって,周知又は著名な商品等表示が有する営業上の信用を保護することにある。


  商品の形態は,本来的には,商品としての機能・効用の発揮や商品の美観の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示する目的を有するものではない。しかし,特定の商品の形態が独自の特徴を有し,かつ,この形態が長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,当該商品等の形態が,上記各号にいう「商品等表示」として保護されることになると解すべきである。


(2) 原告製品の形態の商品等表示性について

ア 原告製品の形態の特徴について


 ・・・省略・・・


e) 上記のような事実にかんがみれば,原告製品は,平成11年3月から販売され始めたものであり,未だ長期間継続的かつ独占的に使用されてきたものとはいえず,また,短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されてきたものともいうことができず,その形態は,被告製品の販売開始時のみならず,現在においても,日本全国の取引者及び需要者に広く認識されているものと認めることはできない。


 不正競争防止法2条1項1号及び2号は,前記のとおり,周知又は著名な商品等表示が有する営業上の信用を保護することをその趣旨とし,商品の形態が,その出所を表示するものとして,その需要者及び取引者間で広く認識されている場合に「商品等表示」として上記各号の保護を受けることとなるものである。

 ・・・省略・・・


 原告製品のような商品の保護は,その構成あるいは機能については,特許法あるいは実用新案法による法定期間内の保護が,また,斬新なデザインについては意匠法による法定期間内の保護が認められ得るとしても,不正競争防止法2条1項1号及び2号による保護を認め,その新規な構成あるいは機能ないしデザインを半永久的に独占的に保護をする結果となることは,他の知的財産権の保護とのバランスからみても相当ではないというべきである。


エ よって,原告製品の形態を,不正競争防止法2条1項1号及び2号における周知商品等表示とも,著名な商品等表示とも認めることはできない。


2 結論

 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。



 追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成19(行ケ)10205 商標登録取消決定取消請求事件 商標権 行政訴訟「大阪プチバナナ」平成19年10月25日 知的財産高等裁判所』(認容判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071026110546.pdf


 追伸2;<気になった記事>

●『「ガチャガチャ」特許訴訟、エポック社の侵害認定』http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20071026AT1D2608E26102007.html
●『エポック「ガチャガチャ」特許権侵害=バンダイ勝訴で製造差し止め−東京地裁http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007102600826
●『「ガシャポン」で特許侵害 バンダイ、エポックに勝訴』http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007102601000494.html
●『サン、12件の特許侵害でNetAppを逆提訴』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20359684,00.htm
●『Sun、NetAppの特許訴訟に反訴』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/26/news070.html
●『VonageとVerizon,特許侵害訴訟の和解条件で合意』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071026/285609/
●『ボネージとベライゾン、最大1億2000万ドルで特許訴訟に和解へ』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20359652,00.htm
●『SanDisk,フラッシュ・メモリーの特許侵害でLGやバッファローなど25社を提訴』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071026/285539/
●『SanDiskフラッシュメモリ応用製品ベンダー25社を特許侵害で提訴』http://japan.internet.com/busnews/20071026/12.html
●『サンディスク、フラッシュメモリメーカー25社を特許侵害で提訴』http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20359727,00.htm
●『IntelTransmeta、1年にわたる特許侵害訴訟合戦に幕――和解金2億5,000万ドルでIntelがライセンス権取得』http://opentechpress.jp/enterprise/07/10/26/041219.shtml