●平成18(行ケ)10534 審決取消請求事件 特許権「凸状の湾曲面鏡」

  本日は、『平成19年09月13日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070914152549.pdf)について取り上げます。


  本件は、進歩性なしの拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟であり、その請求が認容された事案です。

 

  つまり、知財高裁(第4部 田中信義 裁判長)は、


『 (3) しかるところ,本願発明の「非円弧湾曲」と引用例1発明の「反射曲線」とを比較すると,いずれも点O(回転して得られる凸面鏡の中心点)から端部に向かうほど曲半径が大きくなる点で共通することは,被告の主張のとおりである。


 しかしながら,本願発明においては,そのα及びβをどのような値とした場合であっても,順次つなぎあわされて「非円弧湾曲」を形成する個々の円弧湾曲(第一円弧湾曲,第二円弧湾曲・・・)の各円弧の大きさは同一(単位長さβ)であり,かつ,各円弧湾曲の半径は一定の長さ(所定長さα)ずつ大きくなるのに対し,引用例1発明においては,本願発明の各円弧湾曲に相当する各小部分ΔS1,ΔS2,・・・ΔSnの大きさは同一ではなく(Oから端部(P)に向かうに連れて大きくなる。),かつ,点O,P1,P2・・・Pにおける半径が一定の長さずつ大きくなるものともされていない。


 したがって,本願発明の「非円弧湾曲」と引用例1発明の「反射曲線」とは,ともに端部に向かうほど曲半径が大きくなる点で共通するとはいえ,その形状が異なるものであることは明らかである。


 この点につき,審決は,「非円弧湾曲の曲率半径を定義するにあたり,本願発明のように,先ず,円弧上の単位長さ毎の非円弧上の位置において定めるか,引用例1発明のように,先ず,所定の見開き角毎の反射曲線上の位置において定めるかは,当業者が適宜採用しうる設計上の微差というべきである。」と判断するところ,本訴における被告の「本願発明の非円弧湾曲と引用例1発明の反射曲線とは,いずれも端部に向かうほど曲半径が大きくなる点で一致しており,単に曲線の定義の仕方が異なるのみで,実質的な相違はないのであるから,審決がした『設計上の微差』との認定に誤りはない」との主張にかんがみれば,審決の上記判断は,本願発明と引用例1発明とで,定義のしかたは異なっていても,「非円弧湾曲の曲率半径」,すなわち,「非円弧湾曲(反射曲線)」の形状に実質的な相違はないとの趣旨であると考えられるところ,上記のとおり,本願発明の「非円弧湾曲」と引用例1発明の「反射曲線」とは,その形状が異なるものであるから,審決の上記判断及び被告の主張は誤りであるといわざるを得ない。


 そして,本願発明の「非円弧湾曲」と引用例1発明の「反射曲線」の形状が異なることは,審決が認定した相違点1から直接導かれるところであるから,審決は,相違点1についての判断において,上記形状が異なることを前提として,引用例1発明の「反射曲線」の形状を本願発明の「非円弧湾曲」の形状とすることの容易想到性を判断すべきであったのに,これをしていない誤りがあり,この誤りが,結論に影響を及ぼすことは明らかである。


 よって,その余の点(取消事由2)について判断するまでもなく,審決は,取消しを免れない。


(4) なお,付言するに,平成16年9月15日付け意見書(甲第2号証)によれば,審査官は,拒絶査定をするに当たり,本件特許出願が,特許法36条4項,同条6項2号に規定する要件を満たしていないとの事由を含む拒絶理由通知をしたことが窺われるところ,本件審判請求に対しては,かかる事由を含め,再度審理がなされるべきものである。


2 結論

 以上の次第で,審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。  』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。