●平成18(行ケ)10550審決取消請求事件「固体高分子電解質型燃料電池

  本日は、『平成18(行ケ)10550審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「固体高分子電解質燃料電池」平成19年08月08日』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070808162633.pdf)について取上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟であり、原告の請求が棄却された事案です。


 本件では、進歩性違反の拒絶審決に対し、原告は、本件発明が量的にも質的にも顕著な効果を奏するという証拠を提出したものの、下記のような理由で、顕著な効果が認められず、拒絶審決が維持されました。


 つまり、知財高裁(第3部 飯村 敏明 裁判長)は、


『1 取消事由1(容易想到性判断の誤り)について


 ・・・省略・・・
 

イ 原告は,本願発明1は量的にも質的にも顕著な効果を奏するので,容易想到性は否定される旨主張する。


 しかし,引用発明は,電極内の触媒粒子のすべてを高分子電解質で被覆することにより反応サイトを増大させて,電流電圧特性の向上が図られている一方,本願発明1の効果は「ガス拡散電極中に,パーフルオロスルホン酸ポリマーを分散,含有させることにより,エネルギー損失が小さい高性能の固体高分子電解型燃料電池が得られる。」というものであり,引用発明と本願発明1は,質的には何ら変わるところはない。


 また,原告は,本願発明1の,電流密度0.4A/cm2においてセル電圧が50mV程度上昇するという効果は,酸素濃度を5倍に高めた場合に匹敵する効果であると主張し、それが顕著な効果であることの立証として甲33を提出し,電流密度0.4A/cm2のセル電圧差が60mVであり本願発明1の効果はこれに匹敵すると主張するが,その効果の程度が,燃料電池の技術分野において,どのような意義を有するのか不明であり,このことをもって,直ちに量的に顕著な効果であると認めることはできない。


ウ 原告は,本願発明1が予測不可能な顕著な効果を奏することの立証として甲34を提出するが,甲34は,本願明細書に記載された実験データが,本件出願後に発表された理論によっては説明ができないことを述べるにすぎず,本件出願当時の当業者にとって,本願発明1の効果が予測不可能であることを示す根拠とはならない。


 よって,上記原告の主張は失当である。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。