●平成18(ワ)28323損害賠償等請求「自然健康館スーパーフコイダン」

  本日は、『平成18(ワ)28323 損害賠償等請求事件 商標権 民事訴訟「自然健康館スーパーフコイダン」平成19年07月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070727193211.pdf)について取上げます。


 本件は、原告が商標権に基づき損害賠償を求めた訴訟で、商標が非類似と判断され、その請求が棄却された事案です。



 つまり、東京地裁(第46部 設樂隆一 裁判長裁判官)は、


『1 争点1(本件商標と被告標章とが類似するか)について


 ・・・省略・・・


(2) 本件商標の要部について

ア 証拠(乙4ないし9)によれば,いわゆる健康食品の分野では「スーパー・ルテイン」,「スーパー・イソフラボン」,「スーパーDHA 「スーパーコエンザイムQ10」,「スーパープロポリス粒」,「スーパーレシチン」のように,原材料の名称に「スーパー」を付した商品が多数販売されていることが認められる。


イ 証拠(乙10ないし19(各枝番を含む。))によれば,いわゆる健康食品を指定商品とした商標登録出願において原材料の名称に「スーパー」の文字を付した商標は「スーパー」の文字が商品の誇称表示として一般的に使用されていることから,商標法3条1項3号に該当するとして登録に至らなかった例が,多数あることが認められる(具体例として,「スーパーアガリスク」,「スーパールテイン 」,「スーパーイソフラボン」,「スーパーダイズ」,「SUPER/COLLAGEN/スーパーコラーゲン」)。


 また「ピュアフコイダン/PUREFUCOIDAN」,「ナノフコイダン」,「ダブルフコイダン」,「トリプルフコイダン」,「プラチナフコイダン」が商品の品質,原材料を表示するものにすぎず,商標法3条1項3号に該当するとして拒絶査定を受けていることが認められる。


ウ 既に述べたとおり「フコイダン」は,海藻類の成分を抽出して作られた健康食品の原材料を表示する用語である。そして,いわゆる健康食品において「スーパー」は,商品の誇称表示として一般的に使用されている用語である。したがって,本件商標権の指定商品である「海藻エキスを主材料とする液状又は粉状の加工食品」又は「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」の分野では,「スーパーフコイダン」という用語は,高品質の「フコイダン」,すなわち,高品質な,海草類に含有される硫酸化多糖類が含有されていることを記述するにすぎないのであって,それ自体では出所識別力を有せず,本件商標の要部とはなり得ないというべきである。


 そして「フコイダン」を名称に含む様々な健康食品が販売されている状況に照らせば,本件商標は「自然健康館」という製造元の表示と相まって初めて出所識別力が生じるというべきであり,「自然健康館スーパーフコイダン」という本件商標全体が要部であると解するのが相当である。


エ 原告は,自然健康館は小さめに記載され,また,製造元を示すにすぎないので,要部となり得ないと主張する。しかし,既に述べたとおり「スーパーフコイダン」単独では要部となり得ないのであるから,製造元を示す「自然健康館」と「スーパーフコイダン」との表示が相まって出所識別力を発揮するものと認めるのが相当である。原告の上記主張は採用することができない。


 また,原告は,原告が,フコイダンという用語を初めて使用したと主張する。しかし,前記認定事実によれば,原告が初めて「フコイダン」の名称を健康食品に使用したと主張する平成13年夏には,既に複数のフコイダンとの表示を冠する商品が存在していたのであるから,原告の主張は採用することができない。そして,前記認定事実によれば,原告の商品「スーパーフコイダン」は「フコイダン」を含有する商品の一つとして紹介されているにとどまり,数多くある「フコイダン」関連商品の中で「スーパーフコイダン」という名称が特別に出所識別力を有するに至っていると認めることもできない。


(3) 本件商標と被告標章との類否について

 本件商標の要部は,「自然健康館スーパーフコイダン」であるから,その称呼は「しぜんけんこうかんすーぱーふこいだん」である。これに対し,被告標章の要部は「SUPER FUCOIDAN」であるから,その称呼は,単なる「すーぱーふこいだん」であり,両者は類似しない。


 また,本件商標の観念は「自然健康館のスーパーフコイダン」であるのに対し,被告標章の観念は,単なる「スーパーフコイダン」であるから,両者は類似しない。


 さらに,本件商標の外観は「自然健康館」と「スパーフコイダン」を2段に記したものであるのに対し,被告標章は「SUPER」と「FUCOIDAN」と「スーパーフコイダン」を3段に記し,これらの文字と6本の横線を菱形状に表した二つの図形とを組み合わせたものであるから,両者は類似しない。


 このように,本件商標と被告標章とを対比すると,被告標章からは,本件商標において出所表示機能を有している「自然健康館」を含む称呼・観念・外観を全く生じないのであって,両者は出所の誤認混同を生じ得るものではなく,類似しないものと認められる。


 したがって,被告による被告標章の使用は本件商標権を侵害するものではない。また,原告が差止めを求めている別紙被告標章目録記載1の標章は,「SUPER」と「FUCOIDAN」と「スーパーフコイダン」を3段に記したもの(前記横線模様がないもの)であるから,これも本件商標とは非類似であることは明らかである。


2 結論

 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10483 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「弾球遊技機」平成19年07月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070731115457.pdf
●『平成18(行ケ)10048 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「可塑性食品の移送装置」平成19年07月30日 知的財産高等裁判所』(認容判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070731114717.pdf
●『平成17(行ケ)10612 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 「管渠の布設方法」平成19年07月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070731114112.pdf
●『平成18(行ケ)10408 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「管渠の布設方法」平成19年07月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070731113645.pdf
●『平成18(行ケ)10094 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「レンズ及びその製造方法」平成19年07月30日 知的財産高等裁判所』』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070731113036.pdf
●『平成18(行ケ)10018 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟「弾球遊技機」平成19年07月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070731112138.pdf



追伸2;<気になった記事>

●『ソニーも3Mと和解,Liイオン2次電池の特許係争で』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070731/137142/
●『リチウムイオン電極特許係争でソニーと和解=米3M』
http://home.businesswire.com/portal/site/google/index.jsp?ndmViewId=news_view&newsId=20070730005715&newsLang=ja
●『3M、バッテリー関連特許訴訟でソニーと和解』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070731-00000042-zdn_n-sci