●平成18(行ケ)10545 審決取消請求事件 商標権「TOTALCARE トータ

  本日は、『平成18(行ケ)10545 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「TOTALCARE トータルケア」平成19年06月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070702100237.pdf)についてご紹介します。


 本件は、商標登録出願の拒絶審決の取消を求めた訴訟で、原告の請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法3条1項3号(単に商品の品質,用途を表示するにすぎず,自他商品の識別機能を有さない。)の判断が参考になるかと思います。



 つまり、知財高裁(第2部 中野哲弘 裁判長)は、


『2 取消事由(法3条1項3号該当性判断の誤り)の有無

(1) 法3条1項3号が「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,数量,形状(包装の形状を含む,価格若しくは生産若しくは使用。)の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は,このような商標は,商品の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁〔判例時報927号233頁〕参照)。


 この趣旨に照らせば,当該商標が指定商品の品質,用途等を表すものとして審決時に取引者,需要者に広く認識されている場合はもとより,将来を含め,取引者,需要者にその商品の品質,用途等を表すものと認識される可能性があって,これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときは,その商標は,同号に該当すると解するのが相当である。


(2) 本願商標の構成は,前記第3の1(1)に記載したとおり,「TOTALCARE」及び「トータルケア」の文字を二段に併記して成り,その指定商品は第3類「歯磨き」であるところ,その構成中の「TOTAL」 、「トータル」の語は、「①合計。総計。総額。②全体的。総合的」を意味する英語由来の外来語であり(広辞苑第5版。乙1) ,同じく「CARE」, 「ケア」の語も「①介護。世話。②手入れ」を意味する英語由来の外来語である(広辞苑第5版。乙2)であるから,本願商標である「TOTALCARE」及び「トータルケア」の語は,我が国においては「総合的な手入れ」という意味合いで使用され,かつ認識されるものと認められる。そして,この本願商標が指定商品である「歯磨き」に使用されると,審決も述べるように,これに接する取引者,需要者は,「歯周病・虫歯・口臭等を全体的に防ぐための口腔の手入れ」のために使用する商品である程の意味合いを理解するにとどまると認めるのが相当であるから,結局,本願商標は,単に商品の品質,用途を表示するにすぎず,自他商品の識別標識としては認識されないというべきである。


(3) 一方,原告は,本願商標である「TOTALCARE」ないし「トータルケア」について,具体的な使用例に基づいて主張しているので,上記(1)(2)の説示について改めて検討することとする。

 証拠(甲3,乙3,4の1,2,5の1〜3,6の1〜3,7の1,2,8〜22,23の1,2,24〜31)及び弁論の全趣旨によれば「TOTALCARE」 ,「トータルケア」の使用例について,以下のとおり認められる。

ア 本願商標の指定商品「歯磨き」への使用例について


 ・・・省略・・・


イ 「歯磨き」以外についても,歯ブラシ,マウススプレー,歯科治療,爪の手入れ等について,「トータルケア」の語が,「全体的(総合的)な手入れ」の意味で使用された各ホームページが多数存在する(乙12〜22,23の1,2,24〜31)。


ウ そうすると,本願商標は,その指定商品「歯磨き」の取引者や,需要者たる一般消費者が接する機会が多いと考えられるホームページにおいて上記ア(カ)の意味で使用され,また「歯磨き」と関係が近い商品,役務のホームページにおいても「全体的(総合的)な手入れ」の意味で使用されていると認められる。したがって,本願商標は,当該指定商品との関係上,その商品の特性そのものを記述するに止まるものであって,それ以上に,特定の者によって製造販売されたことを明らかにするという出所表示機能を果たしにくいものであり,また,このような商標については,その使用の機会を当該商品を製造販売する多くの事業者に開放しておくことが適当であって,その中の一部の事業者に当該商標の商標登録を許し当該商標の使用を独占させるのは公益上望ましくないというべきである。


(4) 原告の主張に対する補足的説明

ア 原告は,審決が挙げている新聞記事及びインターネット情報によっても,本願商標がその指定商品を取り扱う業界において,単に商品の品質,用途を表示するに過ぎないとの結論に至ることはできないと主張するが,以下の(ア)〜(オ)に説示するとおり,採用することができない。


 ・・・省略・・・


ウ 次に原告は,被告が証拠として提出した多数のホームページ(乙3,4の1,2,5の1〜3,6の1〜3,7の1,2,8〜22,23の1,2,24〜31)を「ウェイバック・マシン」というウェブサイト(甲10)を使って,過去にそれぞれ該当するURLに被告が各乙号証として挙げたホームページが存在したかどうか検索した(甲17の1〜5,18〜28,29の1〜6,30〜32,33の1〜2,34の1〜4,35の1〜4,36,37の1〜40,38,39の1〜2,40の1〜5,41の1〜2,42の1〜6,43の1〜2,44の1〜2,45,46)ところ,そのほとんどが,各ホームページが過去に存在していたことを発見することができなかったものであるから,それらが実際に存在していたと認めることはできないし,仮にそれらのホームページが存在していたことがあったとしても,各乙号証からは,審決日よりも後に存在していたことのみが認められるから,乙3〜31のうち乙4の1,15,27,28を除いた各ホームページは,本願商標が法3条1項3号に該当することの証拠とすることはできないと主張する。


 しかし,乙3,4の1,2,5の1〜3,6の1〜3,7の1,2,8〜22,23の1,2,24〜31の各ホームページの外観や体裁等において現実に存在したホームページとして特に不自然なところがないことに照らせば,「ウェイバック・マシン」というある特定のウェブサイト(甲10)を使用した結果,過去にそれぞれ該当するURLに被告が各乙号証として挙げたホームページが存在したことが確認できなかったからと言って,それだけで当然にこれらが現実に存在したホームページであることまで否定できるとはいえない。


 また,乙4の1,15,27,28の各ホームページは,原告の主張によっても,審決日(平成18年8月11日)において存在していたものである。さらに,その他の各ホームページ(乙3,4の2,5の1〜3,6の1〜3,7の1,2,8〜14,16〜22,23の1,2,24〜26,29〜31)がたとえ上記審決日の後に閲覧できる状態になったものであるとしても,記述的商標であるか否かについては現実にその表示が審決時において特定商品に使用されている事実は必要とされないと考えるべきである上,審決日の時点のみならず審決日の後においてもこれだけ多数のホームページが閲覧できる状態になっており,審決日の後に,一般消費者の認識における「トータルケア」の語義や用法に変化があったことを認めるに足りる証拠もないのであるから,上記各ホームページも,審決時において,その将来に取引者,需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性が認められることを裏付けるものというべきである。


 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。

エ さらに原告は,審決取消訴訟は審決が違法かどうかを判断するものであるから,「取引者,需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性」が本願商標にあるかどうかの判断は,審決時を基準に判断すべきであり,本件各証拠のうち,本願商標が法3条1項3号に該当するかどうかを判断するために使用できるのは,上記(イ)のとおり乙4の1,15,27,28のみであると主張するが,かかる主張が採用できないことは,上記ウに説示したとおりである。


3 結論

 以上によれば,本願商標が法3条1項3号に該当するとした審決の判断に誤りはない。

 よって,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。