●平成16(受)997「生体高分子−リガンド分子の安定複合体構造」最高

  本日は、『平成16(受)997 特許権侵害差止請求事件「生体高分子−リガンド分子の安定複合体構造の探索方法」平成17年06月17日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/74D198CA55CA6B3C4925702600059428.pdf)についてご紹介します。


 本件は、特許権に専用実施件を設定した場合でも、特許権者に特許法100条の差止請求権が認められることを判示した最高裁判決です。


 つまり、最高裁判所第二小法廷は、

『              主  文
   本件上告を棄却する。
   上告費用は上告人の負担とする。
              理  由

 上告代理人中野憲一ほかの上告受理申立て理由第5について

 1 本件は,発明の名称を「生体高分子−リガンド分子の安定複合体構造の探索方法」とする特許権(以下「本件特許権」という。)を有する被上告人が,本件特許権の侵害を理由として,上告人に対し,原判決別紙ロ号物件目録記載の物件の販売の差止めを求める事案である。被上告人は,本件特許権について,専用実施権者を株式会社A,範囲を全部とする専用実施権を設定している。


 2 特許権者は,その特許権について専用実施権を設定したときであっても,当該特許権に基づく差止請求権を行使することができると解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。


 特許権者は,特許権の侵害の停止又は予防のため差止請求権を有する(特許法100条1項)。そして,専用実施権を設定した特許権者は,専用実施権者が特許発明の実施をする権利を専有する範囲については,業としてその特許発明の実施をする権利を失うこととされている(特許法68条ただし書)ところ,この場合に特許権者は差止請求権をも失うかが問題となる。


 特許法100条1項の文言上,専用実施権を設定した特許権者による差止請求権の行使が制限されると解すべき根拠はない。


 また,実質的にみても,専用実施権の設定契約において専用実施権者の売上げに基づいて実施料の額を定めるものとされているような場合には,特許権者には,実施料収入の確保という観点から,特許権の侵害を除去すべき現実的な利益があることは明らかである上,一般に,特許権の侵害を放置していると,専用実施権が何らかの理由により消滅し,特許権者が自ら特許発明を実施しようとする際に不利益を被る可能性があること等を考えると,特許権者にも差止請求権の行使を認める必要があると解される。


 これらのことを考えると,特許権者は,専用実施権を設定したときであっても,差止請求権を失わないものと解すべきである。


 3 以上によれば,被上告人が本件特許権に基づく差止請求権を行使することができるとした原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,採用することができない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 福田 博 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋)  』

と判示されました。



追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(ワ)17357 不正競争行為差止等請求事件 商標権 民事訴訟オービックス,ORBIX」 平成19年05月31日 東京地方裁判所』(認容判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070601164529.pdf
●『平成18(ネ)10087 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟「多頁面付け方法」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070601113407.pdf
●『平成19(行ケ)10103 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「発電機の発電稼働装置」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070531130433.pdf
●『平成18(行ケ)10416 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「2つの対置する側から視認可能なディスプレを有する電子装置」 平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070531121201.pdf
●『平成18(行ケ)10385 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「噛みしめ運動用具」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070531120554.pdf
●『平成18(行ケ)10322 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「車両運転モード表示装置」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070531115533.pdf
●『平成18(行ケ)10272 審決取消請求事件 実用新案権 行政訴訟「シャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボット」平成19年05月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070531115052.pdf


追伸2;<気になった記事>

●『特許審査制度統一へ、独サミット経済文書に方針明記』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070603-00000301-yom-bus_all