●平成18(行ケ)10418 特許権『ソフトアイスクリーム等のコーン容器』

  本日は、『平成18(行ケ)10418 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟『ソフトアイスクリーム等のコーン容器』平成19年03月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070402154452.pdf)について取上げます。


 本件は、進歩性なしの拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、原告の請求が棄却された事案です。


 本件では、進歩性の判断に特別面白い判断はありませんが、特許請求の範囲に記載された「ソフトアイスクリーム等」の「等」という用語により、「ソフトアイスクリーム」以外も含むと判断している(当たり前かもしれませんが)点で、参考になるかと思います。


 この点では、新規性、進歩性等の特許要件を判断する際、特許出願に係る発明の要旨は、請求項の用語が明確である限り、明細書の記載を参酌せずに判断するとしたリパーゼ最高裁判決の原則の通り判断しているものと思われます。


 つまり、知財高裁(第2部 中野哲弘 裁判長)は、

『1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。

2 そこで,原告主張の取消事由について判断することとするが,事案に鑑み,まず,審決の[理由2]のうち本願発明1に関する部分について判断する。


(1) 本願発明の意義

ア 本願明細書(甲7)には,前記第3の1(2)の「特許請求の範囲」請求項1のほか,「発明の詳細な説明」として,次の記載がある。

(ア) 発明の属する技術分野(段落【0001】)
「本発明は,アイスクリームあるいはソフトアイスクリーム等を入れるためのコーン容器に関するものである。」
(イ) 従来の技術(段落【0002】〜【0003】)

 ・・・省略・・・

(ウ) 発明が解決しようとする課題(段落【0004】〜【0005】)

 ・・・省略・・・

 本発明は,上記従来型のコーン容器の問題点を解決するためのもので,その目的とするところは,ソフトアイスクリーム等の表面が溶けてどろどろしたソフトアイスクリーム液が垂れ流れ落ちても,それを握り持っている手にベタベタと付着するような不便が一切無いようにしたソフトアイスクリーム等のコーン容器を提供することにある。」

(エ) 課題を解決するための手段(段落【0006】)

 ・・・省略・・・

(オ) 発明の効果(段落【0025】)

 ・・・省略・・・

イ  上記アによると,1本願発明1は,アイスクリームあるいはソフトアイスクリーム等を入れるためのコーン容器に関するものであること,2本願発明1は,ソフトアイスクリーム等の表面が溶けて,垂れ流れ落ちたソフトアイスクリーム液を,コーン本体の外側に設けられた漏斗型の鍔部で受け,コーン本体に設けた縦割り状の液の通路を通って,コーン本体の胴体内の空間に確実に収容することができるようにするとともに,ソフトアイスクリーム等を積み上げる環状受け台を,鍔部よりも高くすることによって,環状受け台上にソフトアイスクリーム等を積み上げるときに,鍔部の空間をソフトアイスクリーム等で塞がないようにしたものであること,が認められる。


 なお,原告は,本願発明1は,軟らかく凍らせた,しかも機械のノズルから吹き出して積み上げるときから,すでに溶けはじめるほど軟らかい性質を特徴としているソフトアイスクリーム用のコーン容器の発明であると主張するが,「特許請求の範囲」請求項1には,「ソフトアイスクリーム等のコーン容器」と記載されていて,「ソフトアイスクリーム」に「等」が付されていること,上記ア(ア)のとおり,発明の属する技術分野には,「本発明は,アイスクリームあるいはソフトアイスクリーム等を入れるためのコーン容器に関するものである。」と記載されていることからすると,本願発明1は,上記1のとおり,アイスクリームあるいはソフトアイスクリーム等を入れるためのコーン容器に関する発明というべきであって,ソフトアイスクリームに限定した発明であるとは解することはできない。


 ・・・省略・・・


 審決は,本願発明1と引用発明2は「ソフトアイスクリーム等」の「等」の点においても,一致するとするが,「等」の点で一致するとは認められない。しかし,それ以外の点における審決の一致点の判断に誤りはない。なお,後記(4)ウのとおり,本願発明1に含まれるソフトアイスクリームに関する発明について,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に発明することができたと認められる以上,本願発明1について特許を受けることかできないから,審決の上記一致点の認定の誤りは,結論に影響するものではない。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。