●『フラッシュメモリー特許訴訟 「大合議」で知財高裁判断』(2)

 昨日は、午後から知的財産高等裁判所で行われた東芝VSハイニックスのフラッシュメモリ控訴審の大合議を傍聴してきました。本控訴審は、一審は権利者である東芝側の請求が認容され(『平成16(ワ)23600 特許権侵害差止等 半導体記憶装置 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060327185227.pdf))、ハイニックス側が控訴した事件であります。


 侵害訴訟におけるクレーム解釈について、なぜ大合議になったのか,『フラッシュメモリー特許訴訟 「大合議」で知財高裁判断』http://arch.asahi.com/national/update/0118/TKY200701180334.html)等の各新聞記事を読んでも今ひとつピンとこなく、気になっていました。



 今日の控訴側(ハイニックス側)および被控訴側(東芝側)の双方の代理人の主張を傍聴して、大合議になった理由がわかりました。


 それは、2/6の本日記でも書きましたが、2/5の日弁連主催のセミナーの『知的財産訴訟に関する講演会 −知材関連訴訟の現状と今後の課題−』にて東京地裁第46部部長の設楽隆一判事がおっしゃられていた侵害訴訟におけるクレーム解釈と、侵害訴訟における被告側の抗弁事由である特許法104条の3の無効の抗弁のクレーム解釈との整合性であります。


 つまり、ハイニックス側代理人の主張は、特許法104条の3の無効の抗弁におけるクレーム解釈は、特許要件の判断であるので、平成3年のリパーゼ最高裁判決に従いクレームの用語の意義が明確である限り、明細書の記載を参酌せず、クレームの用語のまま解釈し、その結果、本件クレームには、本発明の課題を解決するための手段が記載されてなく、特許法第36条違反の無効理由を有するというものでした。


 一方、東芝代理人の主張は、侵害訴訟のクレーム解釈は特許法70条1項、2項により明細書の記載を参酌して(狭く)解釈するのに、同一侵害訴訟において抗弁される特許法104条の3の無効の抗弁のときは侵害訴訟のクレーム解釈と異なる平成3年リパーゼ最高裁判決の通り(広く)解釈したのでは、一つの侵害訴訟事件のなかで2つのクレーム解釈論が入り、不合理であるので、侵害訴訟における特許法104条の3の無効の抗弁のときのクレーム解釈も特許法70条1項、2項で行うべき、というものでした。



 そういえば、2/5の日弁連主催のセミナーでは、設楽判事が、「侵害訴訟におけるクレーム解釈で70条2項の利用されて明細書等の記載を参酌してクレームの用語の意義が解釈されるということは、クレームの用語の意義が一義的に決まらない場合であり、特許法104条の3の特許無効の抗弁でもリパーゼ最高裁判決の例外が適用されると考えれば、侵害訴訟における侵害論のクレーム解釈も、侵害訴訟における特許無効の抗弁のクレーム解釈も同一の判断になる、と私見をのべられ、この点については、いずれ知財高裁が判断する、とおっしゃられていたような記憶があります。



 私も、平成3年のリパーゼ最高裁判決は、査定系、特に特許付与前における特許要件を判断する際のクレーム解釈のための判決であり、侵害訴訟における侵害論のクレーム解釈も、侵害訴訟における特許無効の抗弁のクレーム解釈も共に特許後であり、しかも当事者対立構造をとるので、同様に特許法第70条1項、2項により判断すべきではないか、と思います。



 なお、本日の口頭審理では、控訴側(ハイニックス側)と、被控訴側(東芝側)の双方の代理人がパワーポイントを使用して、それぞれ、30分近く双方の主張を論理的かつ多角的にプレゼンされました。


 双方の代理人の方とも、この業界では良く名前を拝見する有名な方であり、双方の熱の入った論理的かつ多角的なプレゼンは、とても参考かつ勉強になりました。



追加;<気になった記事>

●『CiscoAppleの「iPhone商標」、協議の期限をさらに延長』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/16/news064.html
●『中国の米製品模造、WTO提訴をあらためて検討=米USTR次席代表』
http://www.worldtimes.co.jp/news/world/kiji/2007-02-16T144113Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-247506-1.html
●『NHK・民放5社、ネットのTV番組転送停止求め提訴』
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/index.cfm?i=2007021609684b3