●特許庁における判定と、特許法104条の3

 昨年末に特許庁から公表された『審判制度に関するQ&A』(http://www.jpo.go.jp/toiawase/faq/sinpan_q.htm)に目を通して気が付いたのですが、判定制度では、従前通り、特許の無効理由を判断していないようです。


 従前は確かにそれで良いと思うのですが、平成16年改正により導入された特許法104条の3(平成15年4月1日施行)により、侵害訴訟でも、侵害か否か(特許発明の技術的範囲に属するか否か)を判断する際、特許に無効理由があると判断した場合、特許権者等の権利行使に制限を与えるようになった現行法を鑑みると、判定制度でも、同様に、侵害か否か(特許発明の技術的範囲に属するか否か)を判断する際に、無効理由の有無を判断しないとバランスが悪いように感がしました。


  ※第百四条の三(特許権者等の権利行使の制限)
  特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。」



 なお、yahoo等で“特許庁 判定 無効理由”等のキーワードを入れて検索してみると、ほぼ1年前の平成16年1月27日に日本知的財産仲裁センターから特許庁へ、特許庁判定制度の廃止を求める『産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会「特許制度の在り方について」(案)---「特許庁の判定制度」についての意見---』(http://www.jpo.go.jp/iken/pdf/iken_tokkyo_kekka2/18.pdf#search='%E7%89%B9%E8%A8%B1%E5%BA%81%20%E5%88%A4%E5%AE%9A%20%E7%84%A1%E5%8A%B9%E7%90%86%E7%94%B1'
が提出されていました。


  この意見書の中で、特許庁における判定制度の廃止の理由の一つとして、

『また、税関による知財侵害品水際対策における特許庁判定の利用は、輸入者側の重要な抗弁となり得る権利の無効主張について特許庁の立場上判定の形式では対応できないという制約が存在する。』

と記載されています。



 特許侵害訴訟における104条の3に基づく抗弁や、知財侵害品水際対策における輸入者側の抗弁を考慮すると、特許庁における判定制度でも、侵害か否か(特許発明の技術的範囲に属するか否か)を判断する際に、無効理由の有無を判断すべき必要があると思われます。


追伸;<気になったニュース>
●『ノキアサムスン電子松下電器産業、無線通信技術の特許侵害で訴えられる』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070104-00000531-reu-bus_all
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=marketsNews&storyID=2007-01-03T135127Z_01_TK3036459_RTRIDST_0_JAAESJEA799.XML
●『松下電器ノキアなどを提訴=近距離無線通信の特許侵害で−米財団』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070104-00000003-jij-int
●『ソニー、米イーストマン・コダック社と特許クロスライセンス契約を締結
〜 係争中の特許訴訟の和解でも合意 〜』
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200701/07-0104/index.html
●『Kodak and Sony, Sony Ericsson Enter Into Technology Cross-License Agreements』
http://www.kodak.com/eknec/PageQuerier.jhtml?pq-path=2709&pq-locale=en_US&gpcid=0900688a8064123f
●『コダックと特許利用で契約 ソニー、訴訟も和解』
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007010301000338.html
●『ソニーコダック、特許相互利用で契約・訴訟も和解』
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070103AT1D0301103012007.html
●『米コダックソニー、クロスライセンス契約を締結』
http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=marketsNews&storyID=2007-01-04T000708Z_01_TK3036795_RTRIDST_0_JAAESJEA928.XML
●『不妊治療 精子採取に新装置 精細管透視し成功率2倍に』
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/science/20070104/20070104_002.shtml
●『日亜化学と大手アミューズメントメーカー、日亜が特許保有白色LED使用で和解(日亜化学工業)』
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=621
●『Statements Attributed to ODS Regarding MPEG LA License Are In Error 』
http://www.mpegla.com/news/n_07-01-03_pr.pdf
●『情報システム 07年本格化する知財評価の活用』
http://www.business-i.jp/news/for-page/chizai/200701030008o.nwc
●『年頭所感』(特許庁長官)
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shoukai/choukan/message2007.htm
●『年頭所感』(内閣官房知的財産戦略推進事務局長)
http://www.ipr.go.jp/2007shokan.html
●『中国政府、ネット著作権保護に本腰か - 国家版権局が米英と著作権保護システムを稼動』
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/01/04/china/
●『米議会、仮想世界の資産に課税 知的保護も検討 』
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200701040018a.nwc