●平成18(行ケ)10053審決取消請求事件「ティッシュペーパー収納箱」

 bongoreさんのブログ「弁理士の日々」(http://blog.goo.ne.jp/bongore789)の10/11に、『平成18(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成18年09月28日 知的財産高等裁判所』の「ティッシュペーパー収納箱」事件(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060928165705.pdf)が取り上げられ、「判決は引用例2の発明の認定を誤っているとしかいいようがないという結論に達しました。」とコメントされていたので、少々気になり、もう一度判決文と、引用例2(実開昭56−113677)の内容を検討してみました。


 すると、判決でも引用されている、引用例2(実開昭56−113677)の明細書の最後の効果のところに、

 「更にこの考案のティッシュペーパー用箱の底壁に設けた押し上げ片形成用切取線に沿って切取ることにより形成した押し上げ片の基部がわを実施例のように傾斜した折り線にしたことにより両押し上げ片を箱の中へ折り線に沿って折り曲げると押し上げ片同志が互いによく係合することができるし、更に押し上げ片の頂部近くにそれぞれ係止用凹みを設けたことにより両押し上げ片は係止用凹みで互いによくかみ合うためによく係止して押し上げ片が倒れることがないから、箱に収納した残りのティッシュペーパーを常に確実に押し上げていることができる。」

と記載されています。


 そして、判決文では、

「確かに,引用例2の上記記載によれば,引用例2発明においては,「外側の切取線を押し上げ片の基部がわで中央の切取線よりやや長くして押し上げ片の基部がわの中央の切取線端部と外側の切取線端部との間にそれぞれ傾斜した折り線」が設けられているため,その押し上げ片を起立させる際,当初は,各押し上げ片は共辺部において相互に押し合う関係になる。


 しかし,各押し上げ片は,頂部近くに設けられた係止用くぼみが相互にかみ合うことにより係止されるのであり,その係止の際,なお,係止用くぼみが相互に押し合うことについては,引用例2には何ら記載もないし,示唆もない。引用例発明2には,本願補正発明のような,係止時における屈折片のたわみにより,係止部の「最奥部」において,相互に押し合う状態を生じさせるようにし,その結果,強固な係止力を発揮させるという技術的思想がないものといわざるを得ない。


 したがって,引用例2には,本願補正発明の「前記両屈折片を起立させたときに,前記各係止部がそれぞれ相手側の係止部に食い込(む)」という構成が記載されていないので,「各押し上げ片側に食い込む係止用凹み(係止用凹みの最奥部で相互に押し合うもの)が形成される」ものは記載されていないといわざるを得ず,これが記載されているとして引用例2発明を認定した審決は誤りである。」

と判示しています。


 しかし、上記引用例2の発明の効果の「・・・押し上げ片同志が互いによく係合することができるし、更に押し上げ片頂部近くにそれぞれ係止用凹みを設けたことにより両押し上げ片は係止用凹みで互いによくかみ合うため・・」の「更に」の意味からして、引用例2の発明の技術思想は、傾斜した折り線による両押し上げ片同士が押し合う係合に、更に係止用凹み同士による係止をプラスしたものと考えられます。


 すると、引用例2には、係止用凹み同士が押し合うことは明記されていないものの、この発明の効果等からすると、係止用凹み同士が押し合うことは示唆されているものと思われ、bongoreさんが指摘されるように、この判決は、引用例2の内容の認定間違いのように思えました。