●平成22(行ケ)10179 審決取消請求事件「バッグインボックス用袋体

 本日は、『平成22(行ケ)10179 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「バッグインボックス用袋体およびバッグインボックス」平成23年01月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110126131749.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審決の棄却審決の取消を求めた審決取消訴訟事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2(容易推考性の存否)における判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、


『3 取消事由2(容易推考性の存否)について

(1) 実願昭58−105524号(実開昭60−13370号)のマイクロフィルム(甲2)記載の発明に関する認定・判断について


ア(ア) 甲2によれば,そこに記載された発明は,外枠と内袋の組合せ容器に関するものであって,従来の容器は容量が20リットル以下の小型のものであり,そのまま大容量化することは取扱いや強度上困難であることから(明細書2頁5行〜9行),外枠と内袋の構成に特別な配慮をすることにより200リットル以上の大型容器を得ることを目的とするものであり(明細書2頁16行〜19行),金属製等の箱形枠の内部にバリヤー性を有する積層フィルムからなる内袋を入れた構成をとるが(明細書2頁20行〜3頁1行),積層フィルムだけで内容品を保持することが困難であるため,内袋の内寸を少なくとも金属枠と同等にし,金属枠で内袋に係る重量を保持するようにすることが好ましく,このため,外枠の腰板は金属製のしっかりとした構造が必要となるなどというものである(明細書3頁17行〜4頁9行)ことが認められる。


 また,そこには,袋の形状がガゼット状のものが示され(明細書4頁14行〜16行,第1図〜第3図),袋に用いる積層フィルムの構成として,最外層,中間層,最内層から成る樹脂フィルムが例示され(明細書5頁7行〜6頁2行),積層フィ
ルム同士が周縁部で接着されている様子が記載されている(第3図)。


(イ) 上記の大型容器においては,内袋が箱形枠に内部から密着し,この箱形枠で圧力を受けることから,内袋の自立性は考慮されていないものと認められる。


イ原告は,甲2記載の発明にバッグインボックス用袋体を多重化する周知技術(甲15〜18等)等を適用して,本件発明1の特徴点aの構成とすることは容易である旨主張する。


 しかし,上記アで認定したとおり,甲2記載の内袋は,それ自体では内容物の圧力を受けることができず,金属製等の箱形枠内に収容されることを前提とした技術であるから,バッグインボックスとは異なるいわゆるバッグインコンテナ用の内袋というべきものであり,本件発明1が対象としたバッグインボックス用の内袋における自立性等に関する技術とは技術的思想が異なるものというべきである。


 このようなバッグインコンテナ用の内袋に関する甲2記載の発明に,技術分野が同一とはいえないバッグインボックス用袋体に関する周知技術(甲15〜18等)を適用する動機はないというべきであり,また,これにガゼット袋を多重化し,強度を高める周知技術を適用して,バッグインボックス用の内袋の自立性等に関する発明である本件発明1の特徴点aを想到することが容易であるともいえない。


 したがって,原告の上記主張は採用することができない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。