●平成21(行ケ)10139 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10139 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ポリシング方法および装置」平成22年02月24日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100225141615.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が認容された事案です。


 本件では、取消事由1(本願発明の要旨認定の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 森義之、裁判官 澁谷勝海)は、


『4 取消事由1(本願発明の要旨認定の誤り)について

(1) 前記2認定のとおり,本願発明は,「ウェハの表面を高速の材料除去速度で均一に平坦化するために,化学機械加工処理の間,ウェハに与えた第1の圧力を第2の圧力へ断続的に複数回減じてパルス状の圧力を作り出して,該パルス状の圧力によって,『研磨スラリーを研磨パッドに塗布するステップ』により塗布された研磨スラリーを研磨パッド上のスラリー窮乏領域に行き渡らせるように移動させ,ウェハの表面を平坦化する」ものである。したがって,本件補正後の請求項1の「パルス状の圧力を作り出す」という用語は,第1の圧力を第2の圧力へ断続的に減じることでパルス状の圧力を積極的に作り出して研磨スラリーに作用させ,研磨パッド上に研磨スラリーを行き渡らせるようにするものであると解することができるから,その旨の原告の主張を認めることができる。


(2) 被告は,上記請求項1の「パルス状の圧力を作り出す」という用語は,単に「第1の圧力を第2の圧力へ断続的に複数回減じ」てパルス状に変化する圧力を作り出すことを意味していることは明確であると主張するが,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たっては,特許出願に関する一件書類に含まれる発明の詳細な説明の記載や図面をも参酌して,その技術的意義を明らかにした上で,技術的に意味のある解釈をすべきである。

 そうすると,上記請求項1の「パルス状の圧力を作り出す」という用語は,上記のとおり解釈することができるのであって,「研磨パッド上に研磨スラリーを行き渡らせるようにする」ことは,「パルス状の圧力を作り出す」ことの結果として起きる現象であるとしても,それを用語の解釈に含めることができないという理由はない。


(3) 以上のとおり,取消事由1は理由がある。この点が,審決の刊行物記載発明の認定の誤りや本願発明と刊行物記載発明との一致点・相違点の認定の誤りをもたらしているかどうかは,後記5及び6のとおりである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。