●平成21(行ケ)10141 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10141 審決取消請求事件 商標権「DEEP SEA」行政訴訟 平成21年10月08日 知的財産高等裁判所』 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091009153113.pdf)について取り上げます。


 本件は、登録商標の不使取消審判の認容審決の取消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が認められた事案です。


 本件では、取消事由1(本件商標が自他商品の識別標識として使用されていないとした認定の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、


『1 取消事由1(本件商標が自他商品の識別標識として使用されていないとした認定の誤り)について


(1) 原告商品の文字盤の表示態様

 原告商品は,水中でも使用できるダイバーズウォッチであって,その文字盤には,中心から上部に「ELGIN INTERNATIONAL」の文字が表され,中心から下部には,順に「WATER RESISTANT」「AUTOMATICDEEPSEA」「660ft=200M」「DATE」と4段で表示され,このうち「AUTOMATIC DEEPSEA」の文字は,他の部分とは異なり赤色で表示されている(甲3)。


(2) 表示の自他商品の識別力

 上記の下部の4段の表示は,腕時計の文字盤上に表されたものであるところ,1行目の「WATER RESISTANT」は腕時計が防水性を有していることを示す一般的な英語用語であり,3行目の「660ft=200M」は660フィートすなわち約200メートルの水深までの耐水性を有していることを示しているものと解され,4行目の「DATE」は腕時計に日付表示機能が搭載されていることを示す一般的な英語用語であって,これらの用語は,いずれも商品の品質等を示すものであって,自他商品の識別標識として使用されているものとみることはできない。


 2行目の「AUTOMATIC DEEPSEA」の表示については,「AUTOMATIC」と「DEEPSEA」との間に約1字分の空白が設けられ,また,「AUTOMATIC」は腕時計が機械式の自動巻時計であることを示す一般的な英語用語であるのに対し,「DEEPSEA」は「深海」を意味する英単語の「DEEP−SEA」を表示し,「AUTOMATIC」とは関連性のない別の意味のものであることからすると,「AUTOMATIC」と「DEEPSEA」とに分離してみることができる。


 なお,この「DEEPSEA」の表示は,「DEEP」と「SEA」とが連続して記載されているか否かなどといった違いはあるが,本件商標と社会通念上同一のものと認められる。


 そして,この「DEEPSEA」については,次行の「660ft=200M」の表示とあいまって,需要者において,水深200メートルの深海においても使用できる耐水性を有するとの機能を表示するものと理解し得る可能性があるが,一方,「DEEPSEA」の語は,深い水深の場所でも使用できる腕時計の品質を表示する語として一般的に使用されているものではないこと(当事者間に争いがない。)などからすると,この「DEEPSEA」の表示については,「深海」の意味を示す用語として,需要者において,テレビ番組等においても目にする機会がめったにない深海や深い海の神秘的なイメージをも与えていると理解することができ,このことは,需要者に対して,これが付された腕時計である原告商品の自他の識別標識としての機能をも果たしているものであって,「DEEPSEA」の表示は,原告商品に自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で用いるものとして付されているということができる。


 この点について,被告は,原告商品が実際に水中で使用できる「ダイバーズウォッチ」であること,原告商品と同程度の防水機能のついた腕時計は多数存在し,一般消費者であっても,腕時計の防水機能の表示等について一定の知識を有するといえ,「660ft=200M」の表示の意味合いを容易に把握することができること,原告商品における「DEEPSEA」の表示態様や「DEEPSEA」の語の意味が容易に理解できることを考慮すれば,取引者・需要者は,「660ft=200M」の表示とあいまって,「DEEPSEA」の表示を「水深200メートルの深海においても使用できる機能及び主な使用表示」と認識するということができ,同表示をもって,原告製品と他の製品を識別するための手掛かりとして認識しているということはできないと主張するが,商品に付された1つの標章が常に1つの機能しか果たさないと解すべき理由はなく,原告商品に付された「DEEPSEA」の表示が,次行の「660ft=200M」の表示とあいまって,需要者において,水深200メートルの深海においても使用できる耐水性を有するとの機能を表示するものと理解し得るとしても,その表示が,同時に,自他商品を識別させるために付されている商標でもあると解することができるものであり,上記のとおりの「DEEPSEA」の持つイメージ等に照らすと,この表示が原告商品に自他商品を識別させる機能をも果たす態様で用いるものとして付されていると解することができるものであって,被告の主張は採用することができない。


 そうすると,原告が主張している取消事由2について検討するまでもなく,本件商標について法50条1項にいう「使用」の事実は認められるべきものであるから,その事実を認めることができないとして原告の商標登録を取り消した本件審決は誤りというほかない。


3 結論

 以上の次第であるから,本件審決は取り消されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。