●平成21(行ケ)10052 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

 弁理士試験の論文試験を受験された受験生の方、お疲れ様です!しばらくは休養して、十分にリフレッシュして下さい。


 さて、本日は、『平成21(行ケ)10052 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090703110835.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録無効審判の認容審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が認容された事案です。


 本件では、商標の類否の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 杜下弘記)は、


『1 取消事由1(両商標から生じる観念の類否の判断の誤り)について

(1) 両商標に係る語句の意味

 ・・・省略・・・

(2) 本件商標及び引用商標から生じる観念

 本件商標は,「天使のスィーツ」の文字を横書きにし,指定商品を第30類「菓子及びパン」とするものであるから,本件商標が菓子に使用された場合は,菓子と密接に関連する「甘い菓子」を意味する一般的な文字である本件商標中の「スィーツ」の部分からは,出所の識別標識としての称呼,観念は生じず,「天使のスィーツ」全体として又は「天使」の部分としてのみ称呼,観念が生じる。また,引用商標は,「エンゼルスィーツ」の片仮名文字及び「Angel Sweets」の欧文字を上下二段に表し,指定商品に第30類「菓子及びパン」を含むものであるから,引用商標が菓子に使用された場合は,菓子と密接に関連する「甘い菓子」を意味する一般的な文字である本件商標中の「スィーツ」の部分からは,出所の識別標識としての称呼,観念は生じず,「エンゼルスィーツ」「Angel Sweets」全体として又は「エンゼル」「Angel」の部分としてのみ称呼,観念が生じる。


 よって,本件商標からは,「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じる。また,上記(1)のとおり,「エンゼル」「Angel」が「天使」の意味を有する我が国で親しまれた語であることに照らすと,引用商標からも,「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じる。


 本件審決は,両商標がいずれも特定の観念を生じないと判断しているが,両商標の観念は,以上のとおり共通するのであって,本件審決の判断は是認することができないといわざるを得ない。


(3) 被告の主張の当否

 被告は,両商標とも全体として特定の観念を生じない造語であると主張する。しかしながら,「エンゼル」「Angel」が「天使」の意味を有することは,指定商品の取引者や需要者のみならず,我が国の一般的な外来語や英語の理解能力を前提とすると,一般人においても極めて容易に認識し得る程度のものであり,他方「スィーツ」の語が「甘い菓子の総称」という,菓子を意味する一般的な語であるから,「天使のスィーツ」と「エンゼルスィーツ」から,いずれも「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じるものといわざるを得ない。


(4) 小括

 そうすると,本件商標と引用商標とは,その観念が同一であるから,それが同一でも類似でもないとした本件審決の前記判断は,誤りである。したがって,取消事由1は理由がある。


2 取消事由2(出所の混同を生ずるおそれがないとした判断の誤り)について

(1) 商標の類否判断

 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。


(2) 本件商標と引用商標との類否本件商標は,「天使のスィーツ」の文字を横書きにし,引用商標は,「エンゼルスィーツ」の片仮名文字及び「Angel Sweets」の欧文字を上下二段に表したものであるから,両商標の外観は相違する。


 また,本件商標からは,「テンシノスィーツ」又は「テンシノ」の称呼を生じ,引用商標からは,「エンゼルスィーツ」又は「エンゼル」の称呼を生じるもので,両商標の称呼は相違する。


 しかしながら,前記1のとおり,両商標から生じる観念は同一であり,指定商品も「菓子及びパン」を共通にするものである。


 そうすると,本件商標と引用商標は,外観及び称呼において類似するとはいえないものの,観念が同一であって,取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,同一の指定商品である「菓子及びパン」に使用した場合に,商品の出所につき誤認混同されるおそれがあるということができる。なお,これに反する取引の実情は見当たらない。


(3) 小括

 そうすると,本件商標は,商標法4条1項11号に該当し,同号に該当しないとした本件審決の判断は,誤りである。したがって,取消事由2は,その趣旨をいうものとして理由があるといわなければならない。


3 結論

 以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由があり,本件審決は取り消されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。