●平成10年に出された知財事件の最高裁判決(2)

 本日は、平成10年に出された知財事件の最高裁判決で、裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている残りの最高裁判決1件について、下記の通り、簡単に紹介します。


●『平成7(オ)637 不正競争 民事訴訟「スナックシャネル事件」平成10年09月10日 最高裁判所第一小法廷 』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080926131330.pdf)

 ・・・『旧不正競争防止法(平成五年法律第四七号による改正前のもの。以下、これを「旧法」といい、右改正後のものを「新法」という。)一条一項二号に規定する「混同ヲ生ゼシムル行為」とは、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに、属する関係が存すると誤信させる行為(以下広義の混同惹起行為)という。)をも包含し、混同を生じさせる行為というためには両者間に競争関係があることを要しないと解すべきことは、当審の判例とするところである(最高裁昭和五七年(オ)第六五八号同五八年一〇月七日第二小法廷判決・民集三七巻八号一〇八二頁、最高裁昭和五六年(オ)第一一六六号同五九年五月二九日第三小法廷判決・民集三八巻七号九二〇頁)。


 本件は、新法附則二条により新法二条一項一号、三条一項、四条が適用されるべきものであるが、新法二条一項一号に規定する「混同を生じさせる行為」は、右判例が旧法一条一項二号の「混同ヲ生ゼシムル行為」について判示するのと同様、広義の混同惹起行為をも包含するものと解するのが相当である。


 けだし、(一)旧法一条一項二号の規定と新法二条一項一号の規定は、いずれも他人の周知の営業表示と同一又は類似の営業表示が無断で使用されることにより周知の営業表示を使用する他人の利益が不当に害されることを防止するという点において、その趣旨を同じくする規定であり、(二)右判例は、企業経営の多角化、同一の表示の商品化事業により結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業を取り巻く経済、社会環境の変化に応して、周知の営業表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同惹起行為をも禁止することが必要であるというものであると解されるところ、このような周知の営業表示を保護する必要性は、新法の下においても変わりはなく、(三)新たに設けられた新法二条一項二号の規定は、他人の著名な営業表示の保護を旧法よりも徹底しようとするもので、この規定が新設されたからといって、周知の営業表示が保護されるべき場合を限定的に解すべき理由とはならないからである。』、等と判示した最高裁判決。