●平成19(ネ)10037 損害賠償請求控訴事件 特許権

 本日は、『平成19(ネ)10037 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成20年05月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080530105620.pdf)について取上げます。


 本件は、原告の発明者名誉権等を侵害したと主張して,原告が被告に対し,損害賠償を請求し棄却された事件の控訴審で、棄却された事案です。


 本件では、争点1の本願発明の発明者が原告であるか否かの判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 上田洋幸、裁判官 三村量一)は、


『2 争点1(本願発明の発明者は原告か。)について

(1) はじめに

  発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいうと規定され(特許法2条1項),産業上利用することができる発明をした者は,・・・その発明について特許を受けることができると規定され(同法29条1項柱書き),また,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに,完成したと解すべきであるとされている(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参照)。


 したがって,発明者とは,自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者,すなわち,当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を指すというべきである。


 当該発明について,例えば,管理者として,部下の研究者に対して一般的管理をした者や,一般的な助言・指導を与えた者や,補助者として,研究者の指示に従い,単にデータをとりまとめた者又は実験を行った者や,発明者に資金を提供したり,設備利用の便宜を与えることにより,発明の完成を援助した者又は委託した者等は,発明者には当たらない。


 もとより,発明者となるためには,一人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく,共同で関与することでも足りるというべきであるが,複数の者が共同発明者となるためには,課題を解決するための着想及びその具体化の過程において,一体的・連続的な協力関係の下に,それぞれが重要な貢献をなすことを要するというべきである。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。