●『平成18(行ケ)10334 審決取消請求事件 商標権 ProMOS TECHNOL

Nbenrishi2007-01-02

 右の写真は、元旦に初詣に行った「野原の文殊様」の写真です。日本三大文殊の一つに挙げられ、学問の神様と言われています。本ブログの読者の中には、弁理士受験生の方もいるかと思いましたので、日記にアップしました。


 さて、本日は、『平成18(行ケ)10334 審決取消請求事件 商標権 ProMOS TECHNOLOGIES)』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061226172211.pdf)について取り上げます。


 本件は、4条1項11号違反の拒絶審決の取り消しを求めた審決訴訟で、商標が引用商標と非類似と判断され、原告の請求が認容されました。


 称呼等の点から商標が非類似と判断された点で、参考になるものと思われます。


 つまり、知財高裁は、

『2 原告の主張アについて

(1)原告は,審決が,本願商標から「プロモス」の称呼が生ずるとして,同称呼を各引用商標との類否判断に供したことは誤りであると主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張は採用することができない。


(2)本願商標は,前記のとおり,図形と文字とを三段に配した組み合わせから構成されているところ,上段に配される図形部分は特定の称呼,観念を生じさせない抽象的な図形である。そして,本願商標の全体的な構成を見ても,上段の図形部分の全体的な形状はほぼ長方形であり,中段及び下段の「ProMOS」「TECHNOLOGIES」の文字も標準的な書体で書されており,これらが上下三段に平行に配されているにすぎないから,図形と文字とが一体となって一つのデザインを形成しているものとも認められない。


 したがって,図形部分と,中段及び下段の「ProMOS」「TECHNOLOGIES」とを,常に一体のものとして把握しなければならない理由は見いだし難い。原告は,上下三段の横幅が揃えられていること等から,やや横長の四角形の枠内にすべての構成要素が配されたまとまりのある態様として渾然一体のものとして需要者らに認識されると主張するが,これらの特徴は,本願商標を把握するに当たり文字部分を図形部分から分離することの妨げになるものとはいえない。


(3)次に,「ProMOS」「TECHNOLOGIES」の文字部分から生ずる称呼について検討すると,下記(i)〜(iii)の点に照らして,本願商標に接する取引者・需要者は,「ProMOS」の部分に着目すると認められるから,本願商標からは,「ProMOS」を英語風に発音した「プロモス」の称呼が生ずると認められる。

                    記
(i)「ProMOS」「TECHNOLOGIES」とが上下二段に配置されており,両者を一体として把握しなければならないものではない。
(ii)「ProMOS」の文字が,「TECHNOLOGIES」よりも大きな書体で記されている。
(iii)「ProMOS」は特段の意味を持たない造語であって固有名詞であると認識される可能性が高い。これに対し,「TECHNOLOGIES」が,英語の普通名詞「Technology」の複数形であることは公知の事実であり,「広辞苑」(第5版)にも「テクノロジー【Technology】(i)技術学。工学。(ii)科学技術」との項目があることからも明らかなように,外来語としてすでに一般化している。


 原告は,「ProMOS TECHNOLOGIES」が原告の英語社名を表しており,一連で一つの企業体を指すものであること等を理由に,「ProMOS TECHNOLOGIES」の文字部分からはこれらを一体とした「プロモステクノロジーズ」の称呼のみが生ずると主張するが,上記(i)〜(iii)の点に照らせば,「プロモス」のみの称呼も生ずるというべきであり,採用することができない。


3 原告の主張イについて

(1)原告は,審決が,本願商標から生ずる「プロモス」の称呼と,各引用商標から生ずる「プラモス」の称呼とが類似すると判断したことは誤りであると主張するので検討する。


(2)「プロモス」の称呼と「プラモス」の称呼とは,ともに4音構成から成り,そのうち「プ」「モ」「ス」の3音を共通にしている。そして,相違する第2音目の「ロ」と「ラ」についてみると,両音は,ともにラ行に属し子音「r」を共通にしており,異なる母音の「o」と「a」とは,いわゆる母(1976年8月10日音三角形の隣同士に位置し調音方法も類似する音声であって,近似する音として聴取されること第3版発行「音聲學大辞典」株式会社三修社刊)が認められる。しかしながら,その一方で,「プロモス」及び「プラモス」のような称呼を一連に発音するときは,語頭の「プ」ではなく第2音の「ロ」又は「ラ」に強勢が置かれるのが一般的であることは,当裁判所に顕著な事実である。

 そうすると,「プロモス」「プラモス」の両称呼をそれぞれ一連に発音するときは,その語調,語感がある程度は近似するといえるものの,これを耳にする者にとって,両称呼を区別することは多くの場合に可能であると認められる。したがって,審決が,両商標は称呼において類似すると断定したことは,適当ではないといわざるを得ない。


4 原告の主張ウについて

(1)商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的取引状況に基づいて判断すべきである。


また,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記三点のうちその一において類似するものでも,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきでない(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。このことは,商品ではなく役務について用いられる商標においても同様であると解される。


 そこで,上記の見地に立って原告主張の取消事由の当否について検討する。


(2)本願商標と引用商標とは,審決が認定するとおり(審決3頁第6段落),外観において相違し,観念において比較することができないものである上に,上記3のとおり,称呼において近似するものではあるが,多くの場合に区別が可能であるものと認められる。


 そして,これらの外観,観念,称呼によって取引者に与える印象,記憶,連想等について検討すると,「広辞苑」(第5版)には,「プロ」で始まる外来語として「プログラム」( program) 「プロダクション」(production)「プロフェッショナル」(professional)等の多数の項目があり,「プロ」の項に「プログラム,プロダクション,……,プロフェッショナル,……などの略」と記載されているところからみて,「プロ」で始まる「プロモス」の称呼に接した者は,これらのものを連想するものと認められる。また, 「プラ」で始まる外来語としては「プラスチック」(plastic)が著名であり,「広辞苑」(第5版)には「プラモデル」の項に「(プラスチック・モデルplastic model に由来する商品名)プラスチック製の部品を組み立てる模型名」との記載があるとおり,「プラスチック」を「プラ」と略することも一般に行われているところからみて,「プラ」で始まる「プラモス」の称呼に接する者は,プラスチックに関連した印象を抱くものと認められる。これらの事情を考慮すれば,取引者に与える印象,記憶,連想の点からみても,本願商標と引用商標とを識別することは十分に可能である。したがって,外観,観念,称呼を総合的に観察すれば,本願商標と引用商標とは,類似する商標であるということはできない。


(3)さらに,指定役務の取引の実情を踏まえて判断すれば,役務の出所に誤認混同をきたすおそれはきわめて小さいものというべきである。


 本願の指定役務は前記のとおり「各種コンピュータ製品・電子製品・通信製品・情報製品及びこれらの周辺機器・構成部分・部品の研究・開発・設計・検査・試験」である。これらの指定役務の性質自体からして,これらの役務を発注しようとする者(取引者・需要者)の大部分は,情報通信分野を中心とする電子機器・部品の製造業者,流通業者等であることが,容易に推認される。そうすると,本願商標を使用した役務の取引者・需要者は,当該役務に関して一定程度以上の知識経験を備えた少数の者に限られると解される。


 また,本願商標の指定役務の提供は,例えばコンピュータ製品の開発であれば,専門的な知識及び経験を備えた技術者によって,高度の技術及び/又は特別の設備を用いて行われるものであって,その他の指定役務についても,程度の差こそあれ,その提供には相応の人的・物的資源を要することが容易に推認される。そして,本願商標を使用した役務の取引者・需要者は,自らが有する知識経験に基づいて,役務の提供者が有するこれらの人的・物的資源を慎重に検討した上で,当該役務の提供を発注する否かを決定することが明らかである。


 これらの事情にかんがみると,本願商標の指定役務の取引者・需要者は,本願商標の一部分から生ずる称呼にすぎない「プロモス」という称呼のみによってその役務を発注することはないか,あったとしても極めてまれであると認められる。したがって,本願商標から生ずる「プロモス」の称呼が各引用商標の「プラモス」の称呼と近似することのみをもって,役務の出所に誤認混同が生ずるおそれがあるということはできない。被告は,簡易迅速を尊ぶ取引の実際においては,極めて簡便な電話を用いた口頭による取引を行う場合も決して少なくないと考えられると主張するが,上記の点に照らして採用することができない。


(4)一方,被告は,本願商標及び各引用商標の指定役務に係る取引の実情として原告が主張する内容は各商標が現在使用されている役務についての特殊的,限定的なものにすぎず,各商標の指定役務全般についての一般的,恒常的な取引の実情とはいい得ない,と主張する。


 確かに,原告の主張中には,本願商標についての出願人の使用状況及び各引用商標についての商標権者(ダイセル化学工業株式会社)の使用状況を指摘した上,これらを「取引の実情」として考慮すれば役務の出所の誤認混同は生じないと主張している部分があるところ,原告主張のうちこれらの指摘事項は,各商標の指定役務全般についての一般的,恒常的な取引の実情ではなく,各商標が現在使用されている役務についての特殊的,限定的な取引の事情にすぎないから,登録出願された商標が商標法4条1項11号に該当するか否かの判断において参酌すべきものではない。


 しかし,上記(3)のとおり,本願商標の指定役務は,役務の性質自体からして,正に「一般的,恒常的」に,限られた範囲の取引者,需要者によって,役務の提供者の能力等についての十分な注意のもとに発注されるものと推認できるのであるから,このことを看過している点において,審決の判断には誤りがあるといわざると得ない。


(5)したがって,本願商標と各引用商標とは,同一または類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められず,互いに類似する商標であるということはできない。


5 結語
 以上のとおり,審決には,商標法4条1項11号にいう類否判断を誤った違法があり,この誤りは審決の結論に影響を及ぼすべきものである。よって,原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。』

と判断されました。


 商標は普段担当してないので、類比判断の方法など、商標の判例はとても参考になります。


追伸;<気になった記事>
●『年頭所感/日本経団連会長・御手洗冨士夫 −「希望の国、日本」の実現に向けて』
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2007/0101/01.html
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http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2007/0101/09.html
●『知的財産委員会を開催 −産業力強化へ向けた「国際標準総合戦略」について説明を聴取』
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2007/0101/07.html