●日本知的財産仲裁センターの第8回シンポジウムについて(3)

 さらに続きですが、独禁法との関係でパテントプールに非必須特許を含めるか否かの問題というのは、独禁法の点からすると、パテントプールには、なるべく技術標準には必須特許以外はいれたくないから、とのことのようです。
 パテントプールに非必須特許を含めると、ライセンスをした場合に、非必須特許も抱き合わせでライセンスすることになるからのようです。例えば、マイクロソフトのOSとオフィスソフトの抱き合わせ販売が独禁法違反になった理由と同じではないでしょうか。


 しかし、ライセンシーからすると、パテントプールより必須特許のライセンスを受けて発明を実施しても、非必須特許を実施することになる場合には、非必須特許のライセンスがまた必要になり、ライセンス料の上積みとなり、まとめてライセンスして欲しいからとのことのようです。
 パテントプールが非必須特許も抱き合わせてライセンスしたとしても、通常は、ライセンス料が一定比率でキャップ(上限)があるので、非必須特許を含めたとしても、ライセンス料が上積みされるわけではなく、ライセンシーには何等不利にならないから、という理由のようです。


 この点は色々な見解があり難しいようですが、非必須特許をパテントプールに含めても、ライセンスが非制限的?または被差別的?にならなければ、独禁法上は問題にならない?のではと言われたようなような気がします(公取の方は、立場上、明言は避けられたような気がします)。


 次に、必須特許を保有するがパテントプールに参加しないメーカー(アウトサイダー)の存在も、大きな問題の一つのようです。
 パテントプールから標準特許のライセンスを受けて実施をしても、アウトサイダーの特許に侵害になる場合には、結局、実施できないか、あるいはアウトサイダーへライセンス料を支払うことになり、ライセンス料の上積みになるからです。

 なお、現行法では、アウトサイダーをパテントプールに強制的に参加させことは、主権の制限等となり、困難とのことのようです。
 また、特許法93条の公共の利益のための裁定実施権等によりアウトサイダーの特許のライセンスを認めてように要求したこともあったようですが、93条の裁定実施権の乱用や感情論等により認められられなかった、とのことです。


 このように、パテントプールに関しては、実際にパテントプールに携わり企業間の調整をしている企業の実務者と、知財分野の法律専門家や学者との間に、様々な見解の相違があり、妥協の産物として現在のパテントプールになったとのことです。
 

追伸1;
 「UWBが国内でも今夏に利用可能に,3年後に条件見直し」(http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060324/115395/?ST=bbint)という記事が掲載されていました。UWBの基本特許は確か米国メーカが持っており、UWBは測位精度が非常に高いため、最初は軍事利用のみされ、商用利用が制限され、やっと数年前から商用利用が可能になったと聞いています。UWBの特許の取扱いが、ふと気になりました。


追伸2;
 「ウィルコムW-SIMが「特許権侵害」として訴訟提起を受ける」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060325-00000020-zdn_m-sci)という記事が掲載されていました。
 その記事の中に、訴えた側の会社である「ヒューネット・ディスプレイテクノロジーは、ヒューネットの100%子会社で従業員数は17人。」とあり、ヒューネットという会社名で突然思い出しました。
 ヒューネット社は、FCS(フィールドシーケンシャル)−LCDというカラーフィルタを用いないLCD技術の基本特許を所有しており、1,2年前に、モトローラ社(http://www.hunet.com/jp/press/index.html?year=2004)や、サムスンhttp://www.hunet.com/jp/press/index.html?year=2005)等にライセンスをしたベンチャー企業でありました。
 17人でこの成果は、本当に凄い!です。いや凄過ぎます。