●平成21(ワ)6909 不正競争行為差止等請求事件 商標権

 本日は、『平成21(ワ)6909 不正競争行為差止等請求事件 商標権 平成22年11月12日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101124113635.pdf)について取り上げます。


 本件は、不正競争行為差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、争点(1)ア(原告各商品形態は周知の商品等表示といえるか)および争点(2)(一般不法行為の成否)についての判断が参考になるかと思います。


  つまり、東京地裁(民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳、裁判官 坂本康博、裁判官 寺田利彦)は、

『1 争点(1)ア(原告各商品形態は周知の商品等表示といえるか)について

(1) 前提事実に加え,以下に掲げる証拠(各項に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

 ・・・省略・・・

(2) 以上認定した事実に基づき,原告各商品形態が法2条1項1号で保護される周知の商品等表示といえるか否かについて検討する。


商品の形態は,一次的には商品の特性そのものであるが,二次的には商品の出所を表示する機能をも併有し得るというべきであり,商品の形態が他の同種商品と識別し得る独特の形態である場合には,商品出所表示機能を有し法2条1項1号所定の商品等表示に該当する場合がある。


 そして,独特の商品形態が長年使用され又は強力に広告宣伝等がされたことにより,商品等表示として周知性を獲得した場合には,当該商品形態は同号による保護を受けることができるが,他方,商品の形態が他の同種商品と比べてありふれたものである場合には,長年使用され又は強力に宣伝広告等がされたとしても,商品等表示として周知性を獲得することはできない。


イこれを本件についてみるに,原告が主張する原告各ランプの形態的特徴は,?集光鏡の形状が他社製品の奥行きよりも短く設計されており,他社製品に比べて湾が浅い,?集光鏡の背面部外周縁の頂部にランプを光源装置に取り付ける際の位置決め用切り欠き部が設けられている,?原告各光源装置に対応するために形成された250型用プラグ又は252型用プラグが使用されているの3点である。


 しかし,?については,ケンコーを除く他社製品がいずれも原告商品と同様に半球状の集光鏡を備えていることは前記認定のとおりであって,これによれば,奥行きの短さ,湾の浅さといった形状の相違は相対的な違いにすぎない。?についても,半球状の集光鏡を備える他社製品がいずれも外周縁部ないし外周側面部に位置決め用の切り欠き部を備えていることは前記認定のとおりであって,これによれば,同形のランプにとって,位置決めのため同部位に切り欠き部を設けた形態自体は公知公用の機能的形態であり,原告商品独自の形態であるとはいえない。また,?についても,前記認定のとおり250型用プラグ及び252型用プラグはいずれも量産品であって,それ自体特異な形態をしているとは認められない(このことは,現在,250型用プラグが市場に流通しておらず,原告に対してのみ供給されていても,同様である。)。したがって,原告が原告各商品の形態的特徴であると主張する上記?〜?の各点は,いずれもそれだけで他の同種商品と識別できるだけの形態的特徴であるとは認められず,これらを組み合わせても,独自の形態的特徴を有するに至るとは認められない。


 そして,ほかに原告各ランプが他の同種商品と識別し得る独特の形態を有していることについての主張立証はない。


 また,原告商品の販売期間は原告250型ランプが約14年間,原告252型ランプは約5年間であるが,この間,原告各ランプがその形態により他の同種商品と識別し得るに足りる強力な宣伝広告等がされたとの事実も認められない(付言すれば,形態的特徴であると主張する上記?〜?の各点が需要者に明確に認識できるような方法で原告各ランプの宣伝広告等が行なわれた事実すら認められない。)。


 そうすると,原告各商品形態は,いずれもメタルハライド光源装置の交換ランプとして,独特の形態であるとは認められない上,他の同種商品と識別し得るに足りる強力な広告宣伝等がされたとも認められないのであるから,原告各商品形態が,原告の業務に係る交換ランプであることを示す商品等表示として需要者の間に広く認識されていたものとは認め難い。


ウ原告は,原告各ランプは,原告各光源装置と組織的機能的一体性を持って形成されているため,原告各光源装置以外に適合することはなく,したがって,原告各ランプの市場は原告各光源装置の流通先に限られるところ,原告は少なくとも被告が現われるまでは同市場を独占していたので,同市場において原告各商品形態は周知の商品等表示であると主張する。


 しかしながら,原告各商品形態が交換ランプとしてごくありふれた形態であって何ら独特の形状を有するものでなく,他の同種商品と識別し得るに足りる強力な広告宣伝等がされたとも認められないことは前示のとおりである。そうである以上,原告各ランプが原告各光源装置以外に適合しないことによりその需要者が限定されるとしても,需要者が原告各商品形態をもって原告の商品等表示と認識するということはできないから,原告各商品形態が原告の商品等表示として周知性を獲得することはできない。


 また,原告の主張が,原告各光源装置の形状に適合するための形態自体を特徴的形態であるというのであれば,そのような形態は,原告各光源装置に使用する交換ランプとしての互換性を維持するために他の形態を選択する余地のない不可避的な形態であって,法2条1項1号の商品等表示の対象からは除外されるというべきである。


 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。


2 争点(2)(一般不法行為の成否)について

 原告は,被告は原告各ランプの形態のみならず,梱包やプラグの形態,被覆コードの有無についてまで原告各ランプのそれを積極的に模倣して原告商品と被告商品の混同を生じさせようとしており,これらの行為が圧倒的な市場占有率を有する原告からの受注変更を獲得することを目的とした安易かつ不公正な営業活動であることは明らかであるから,被告に不法行為が成立すると主張する。


 しかしながら,原告の主張は原告各ランプの形態が法2条1項1号による保護を受けるべき商品等表示に当たることを前提とするところ,同形態がこれに当たらないことは前示のとおりであって,原告の主張はその前提を異にする上,原告が模倣されたと主張する原告各ランプの梱包は,白色正方形のダンボール箱と商品を保護するための白色の発泡スチロール様のものから成るごくありふれたものであって,何ら特徴的な形態を有するものではない(甲10の1〜6)。また,前記認定の原告各ランプの需要者やその流通経路を考慮すれば,需要者が商品の梱包やプラグの形態,被覆コードの有無に着目して商品を選択しているとは認め難い上,被告が原告が主張するような不正な目的を持ってこれらの点を積極的に模倣したとも認め難い。


 そうすると,原告の指摘する点は,いずれも被告に原告が主張するような不正な目的があったことを推認させるに足りるとはいえず,ほかに被告が正当な自由競争の範囲を逸脱した行為を行ったと認めるに足りる証拠もない。

 以上によれば,被告に原告主張の不法行為が成立するということはできない。

3 結論

 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。