●平成29(行ケ)10107 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「RYO

 本日は、『平成29(行ケ)10107 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「RYOKUKEN AOJIRU」平成30年1月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/380/087380_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件は、共有に係る登録商標の不使用取消審決に対する共有者の一人によりされた審決取消訴訟によって取消された審決の取消を求めた審決取消訴訟が棄却された事案です。


 本件では、共有者の一人によりされた審決取消請求の適法性についての判断が参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 高部眞規子、裁判官 山門優、裁判官 片瀬亮)は、

『1 本案前の抗弁について
 被告は,原告といきいき緑健は,本件商標に係る商標権を共有するところ,原告は,単独で本件審決の取消しを請求するから,本件訴えは不適法であると主張する。

 しかし,いったん登録された商標権について,登録商標の使用をしていないことを理由に商標登録の取消審決がされた場合に,これに対する取消訴訟を提起することなく出訴期間を経過したときは,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみなされることとなり,登録商標を排他的に使用する権利が消滅するものとされている(商標法54条2項)。したがって,上記取消訴訟の提起は,商標権の消滅を防ぐ保存行為に当たるから,商標権の共有者の1人が単独でもすることができるものと解される。そして,商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起することができるとしても,訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない。


 また,商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態に陥る場合や,訴訟提起について他の共有者の協力が得られない場合なども考えられるところ,このような場合に,共有に係る商標登録の取消審決に対する取消訴訟が固有必要的共同訴訟であると解して,共有者の1人が単独で提起した訴えは不適法であるとすると,出訴期間の満了と同時に取消審決が確定し,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみなされることとなり,不当な結果となりかねない。

 さらに,商標権の共有者の1人が単独で取消審決の取消訴訟を提起することができると解しても,その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には,その取消しの効力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項),再度,特許庁で共有者全員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法181条2項)。他方,その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には,他の共有者の出訴期間の満了により,取消審決が確定し,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみなされることになる(商標法54条2項)。いずれの場合にも,合一確定の要請に反する事態は生じない。なお,各共有者が共同して又は各別に取消訴訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべきであるから,併合の上審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。


 以上によれば,商標権の共有者の1人は,共有に係る商標登録の取消審決がされたときは,単独で取消審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当である(最高裁平成13年(行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・民集56巻2号348頁参照)。』

 と判示されました。

 
尚、本件で引用している最高裁判決は、
『平成13(行ヒ)142 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「ETNIES事件」平成14年02月22日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120721397799.pdf
 です。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。