●平成29(行ケ)10048審決取消請求事件 意匠権「建築扉用把手」行政

 本日も、『平成29(行ケ)10048 審決取消請求事件 意匠権「建築扉用把手」行政訴訟 平成29年9月27日 知財高裁 』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/109/087109_hanrei.pdf)について取り上げます。

 本件では、取消事由1(手続違背)についての判断も参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 清水節、裁判官 中島基至、裁判官 岡田慎吾)は

『1 取消事由1(手続違背)について
原告は,審決に至るまでの間,職権証拠調べをした参考意匠1及び2の存在を一切知らされていなかったため,反論や反証の機会を与えられることはなかったのであるから,その結果を通知するなどして原告に対し意見を申し立てる機会を与えずにされた証拠調べは,意匠法52条の準用する特許法150条5項に違反するなどと主張する。

 しかしながら,審決が引用した参考意匠1及び2は,本件事実が周知であることを示すものとして例示されているにすぎず,参考意匠1及び2を職権で取り調べたことによって,本件事実が認定されたものではない。かえって,乙1ないし6記載の各製品が原告の製品であり,当該各製品に係る各意匠が公知意匠であることについては当事者間に争いがないのであるから(第2回口頭弁論期日調書参照),上記各公知意匠によれば,参考意匠1及び2を例示されるまでもなく,横長棒状で底面が平坦面状であって側面中間部が凹んでいる建築扉用の把手は,原告自身においても周知であったことが認められる。実質的にみても,本件事実に係る認定の当否については,原告が平成28年6月30日付け審判請求書(甲4)において,「需要者にとって建築扉用の把手の形状は,建築扉との間に指を差し込める程度の隙間を有している細長い棒状であると一般的に認識されている」として,本件意匠の要部を認定した上で,本件意匠と甲1意匠が類似すると主張したのに対し,被告は,同年8月29日付け審判事件答弁書(甲5)において,全体を棒状体にする点は建築用扉の把手においてありふれた形態であるなどと反論し,さらに,原告は,同年10月14日付け弁駁書(甲7)においてこれに対する再反論をしているのであるから,これらの主張の経緯に照らしても,原告には反論の機会が与えられていたのであり,原告に実質的な不利益は生じなかったものと認められる。

 以上の事情によれば,審判における証拠調べは,意匠法52条の準用する特許法150条5項に違反するということはできない。

 したがって,原告の主張は,採用することができない。』

  と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。