●平成22(ワ)39625 職務発明補償金請求事件 その他 民事訴訟

  本日は、『平成22(ワ)39625 職務発明補償金請求事件 その他 民事訴訟 平成26年2月27日 東京地方裁判所 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140306142929.pdf』について取り上げます。


 本件は、職務発明補償金請求事件です。


 本件では、本件発明により被告が受けるべき利益の額についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 志賀勝)は、


『1 争点?(本件発明により被告が受けるべき利益の額)について

(1) 本件発明により被告が受けるべき利益について


 特許法35条は,職務発明について特許を受ける権利が当該発明をした従業者等に原始的に帰属すること(同法29条1項参照)を前提に,? 使用者等が従業者等の職務発明に関する特許権について通常実施権を有すること(同法35条1項),? 従業者等は,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権(以下「特許を受ける権利等」という。)を承継させたとき,相当の対価の支払を受ける権利を有すること(同条3項),?その対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならないこと(同条4項)などを規定している。


 これによれば,特許法35条3項が規定する相当対価支払請求権は,従業者等が職務発明について使用者等に特許を受ける権利等を承継させた時点で,発生するとともに,その額も定まるものと解される。もっとも,相当対価支払請求権の額は,上記時点までの資料だけで定めることが困難であるから,承継前の事情だけでなく,職務発明により使用者等が受けた利益の額等,承継後の事情をも参照して定めるのが相当である。


 また,職務発明により使用者等が受けるべき利益とは,職務発明の実施や職務発明についての特許を受ける権利等の行使又は処分等により使用者等が得られると客観的に見込まれる利益であって,職務発明と当該利益との間に相当因果関係があるものをいうと解される。


 具体的には,使用者等において,職務発明を自ら実施することによって得られる利益や,職務発明を他人に実施させることによって得られる実施料,職務発明についての特許を受ける権利等を譲渡することによって得られる譲渡利益等が挙げられる。


 もっとも,使用者等は,職務発明について従業者等から特許を受ける権利等を承継しなくても,特許法35条1項の趣旨に照らせば,職務発明がされた時から職務発明について通常実施権を有するものと解されるから,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる利益は,使用者等が通常実施権を行使することによって得られる利益を控除したいわゆる超過利益に限られるというべきである。


 そして,超過利益は,使用者等が職務発明の実施を法律上又は事実上独占することによって生じるから,補償金支払請求権が生じ得る出願公開の時から特許権の消滅又は処分の時までに生じた利益に限られるものと解される。


 さらに,超過利益の算定は,特許法102条3項の趣旨に照らせば,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる利益から使用者等が通常実施権を行使することによって得られる利益を控除する方法によるだけでなく,使用者等が職務発明を自ら実施することによって得られる売上高から使用者等が通常実施権を行使することによって得られる売上高を控除したいわゆる超過売上高に,他人に通常実施権を許諾すれば得られたはずのいわゆる想定実施料の率を乗じる方法によってもすることができると解するのが相当である。


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。